注目選手は?勝敗の鍵は?ラグビー日本―イングランド戦 WOWOWでW解説のSH田中&SO松田が対談
2022年11月11日 12:25
ラグビー
田中「オールブラックスに対して日本代表があの点差で試合を運べたことは率直にうれしかったです。もし勝っていればすごく自信がついたはずなので悔しい部分もありました。加えてオールブラックスに本来の強さが見られなかった悲しさなど、いろいろな感情が入り混じった試合でした」
松田「プレーヤーとしてグラウンドに立ちたかったという思いがありましたし、日本であれだけ多くの観客(6万5188人)の前でプレーできることはうらやましかったです。日本代表は細かいミスもありましたが、本当にいいラグビーをしていました。オールブラックス相手にあれだけのラグビーができたことは日本代表のレベルが上がっていることを証明していますし、向かっている方向は間違っていないと思います」
――先発SOは埼玉の山沢拓也選手でした。チームメートの松田選手から見て山沢選手のパフォーマンスはいかがでしたか?
松田「彼は緊張していたらしいですが、ポテンシャルも経験もある選手なので大丈夫だろうと思いながら試合を見ていました。やはり持っている力はすごいと思いましたね。9番の流大選手と2人で上手くコントロールしていたと思います」
――その流選手のプレーについて、田中選手は同じSHとしてどのように感じましたか?
田中「すごくいいテンポをつくっていました。以前はサポートしてトライするようなケースはあまりなかったのですが、やはり斎藤直人選手が同じチーム(東京SG)に入って代表でも一緒にプレーしてきたこともあってか、サポートするのが非常に上手くなったと感じました」
――素晴らしいラグビーを見せた日本代表ですが、もし課題を挙げるとしたらどのあたりでしょうか?
松田「見ていて一番感じたのは反則やミスの多さです。それが多いと失点に直結し苦しい展開になりますので、そこは課題だと思いました。また、ダブルタックル(ボールを持った相手に2人の選手がタックルするプレー)が決まらずにオフロードパスをつながれると体の大きいスピードのあるチームを止めるのが難しくなりますので、常に2人でディフェンスすることが大事だと思います」
田中「僕が感じたのはやはり前半の試合運びが重要だということですね。しんどい練習をして体力がある日本代表ですから、前半に失点を抑えれば後半は追い上げることができます。それが今の日本のスタイルだと思いますので、まずは前半しっかり抑えつつ相手を疲れさせた上で後半を迎えてほしいです」
――日本代表のアタックについてはいかがでしょうか?
田中「以前の日本代表よりもかなりレベルアップしています。ただ、ニュージーランド戦では運が良かったトライもありましたので、もう少しパスを回してチームとしてのトライを取れるといいですね」
松田「相手ディフェンスを崩した場面で最後のパスがつながらなかった場面がいくつかありましたので、本当に細かい部分の精度が大事になると思います」
――23年W杯の前哨戦となる11月12日のイングランド―日本戦は、お2人によるダブルゲスト解説となります。
田中「緊張してはいますが、力也と一緒なのでやりやすいです」
松田「僕もフミさんがいるので安心です。プレーヤー目線を大事にしながら解説したいですね。しかも9番と10番の関係ですので、その切り口で解説できたらと思っています」
――試合のポイントとなるのはどのあたりでしょうか?
田中「エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は日本代表をかなり分析してくるはずです。それでも日本代表は、例えば一発でトライを取れるようなスペシャルなサインを考案して、しっかりトライを取ったうえで守り切る、そんなラグビーができれば勝機はあるのではないかと思います」
松田「やはり大事なのはゲームマネジメントですね。おそらくキック主体の戦術になると思います。あとはディフェンスです。オールブラックス戦ではモールディフェンスでしっかり相手を止めていましたので、自信がついたはずです。イングランドのフィジカルなラグビーにディフェンスでどれだけ対抗できるかが重要ですし、ダブルタックルが決まり始めれば自分たちのペースになってくると思います」
――日本代表のキーマンを1人挙げるとしたらどの選手でしょうか?
松田「やはり僕と同じスタンドオフの選手です。山沢拓也選手、李承信選手、中尾隼太選手のうち誰が出場するかわかりませんが、その選手がどれだけチームをドライブしてゲームコントロールできるかが勝敗に大きく関わってくると思います」
田中「1人だけ挙げるのは難しいですが、やはりフォワードが鍵になると思います。その中で誰がチームを引っ張っていけるかと考えると、リーチ・マイケル選手、姫野和樹選手、テビタ・タタフ選手がキーマンとなりそうです。特にタタフ選手がいかに前に出てチームに勢いをつけてくれるかがポイントになると考えています」
――一方のイングランドには、新進気鋭のSOマーカス・スミス選手がいます。
松田「高いポテンシャルを持っていますし、自ら仕掛けるファンタジスタタイプの選手です。それを支えているのがキャプテンでセンターのオーウェン・ファレル選手です。その2人のバランスがイングランドの強みであり、脅威になってくると思います」
――SHはベテランのベン・ヤングズ選手が健在で、若手も急成長しています。
田中「いい選手ですが、誰が出てきたから何かを変えるのではなく、自分たちのラグビーを貫くことが大事です。日本代表はキックを蹴って、しっかりディフェンスして、ボールを取り返して、外側でトライを取るラグビーを継続してやってもらいたいです」
――そして11月20日に対戦するフランス代表には、昨年のワールドラグビー年間最優秀選手のアントワーヌ・デュポン選手がいます。不動の先発SHにして主将です。
田中「デュポン選手を初めて見た時、すごくセンスがある上に力強いランとパスもでき、間違いなく世界のトッププレーヤーになるだろうと思っていました。代表でもリーグ(TOP14)でも本当に素晴らしいプレーをしていますし、彼を自由に走らせるのは危険です。まずは彼をしっかり見ること、そしてプレッシャーをかけて彼をただパスするだけの存在にできればフランスを止められると思います」
――デュポン選手とハーフ団を組む可能性が高いSOが、ロマン・ヌタマック選手です。
松田「僕(28歳)よりも若い選手ですが(23歳)、非常に落ち着きがあります。試合中にどんな状況になっても顔色を変えずにクールにプレーしている、そんな印象です。例えばフィジカルでプレッシャーをかけるなど、ヌタマック選手をどう焦らせるかが勝敗のポイントになるでしょう。その周りにもいいランナーが揃っていますので、1対1で戦われ始めると相手にどんどん前に出られてしまいます。そうさせないためにしっかりプレッシャーをかけ続けながら戦う必要があります」
――最後に日本代表への期待の言葉をお願いします。
田中「日本の代表ですので決して言い訳はできません。勝って日本のファンのみなさんにその姿を見せることが代表の義務ですので、2試合ともしっかり頑張って僕たちに素晴らしい結果を見せてほしいと思います」
松田「23年W杯に向けて全員必死なのがわかりますし、この大事な時期にアウェーでイングランドとフランスと対戦できることはすごくいい経験になります。1人1人がそれを感じ取ってほしいですし、結果として表してほしいです」
◆オータムネーションズシリーズ イングランド―日本放送予定
▽WOWOWプライム 12日23時50分~
※WOWOWオンデマンドでライブ配信
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