阪神「常識破り」の快進撃――最多失策を補う「バウンスバック」
2017年05月10日 09:00
野球
![阪神「常識破り」の快進撃――最多失策を補う「バウンスバック」](/baseball/news/2017/05/10/jpeg/20170510s00001173119000p_view.jpg)
守備力と順位はおおむね正の相関関係にある。堅固な守備陣の上に勝利が輝く、というのが定説となっている。
それでもリーグ最多失策で優勝した例はある。
最近では2011年の中日がリーグ最多失策で優勝を果たした。ただ、この年はリーグ平均守備率が9割8分7厘と高く、中日の失策数も83個と少なかった。リーグ最高の防御率2・46という強力投手陣の足を引っ張るほどではなかった。
パ・リーグでは2008年の西武が最多98失策で優勝。チーム198本塁打は2位のオリックス152本に大差をつけて最多。他チームを圧倒する攻撃力があった。
他に2リーグ分立後、最多失策で優勝した例はセで60年大洋(現DeNA)、74年中日、82年中日、88年中日、パで67年阪急(現オリックス)、72年阪急、76年阪急、78年阪急、89年近鉄、95年オリックスがある。
では、先の中日の投手力や西武の攻撃力ように、今季の阪神は何が弱い守備力を補っているのだろう。チーム打率2位、本塁打数5位、防御率2位……など、特筆すべき数字は見えない。あえてあげれば、救援陣の防御率2・13がリーグ最高で、桑原、マテオ、ドリスらの必勝継投が確立されている点だろうか。
いや、数字には表れ出ない特徴に「反発力」がある。ミスを取り返す力と言えばいいだろうか。
たとえば、球団史上最多9点差を逆転で勝った5月6日の広島戦(甲子園)では、6回表まで3失策。この時点で1―9だった。ところが、2失策の中谷が6回裏に死球と7回裏に左前打、1失策の原口が押し出し四球を選ぶなど、攻撃面で逆転に貢献して見せた。
その前日5日の広島戦(甲子園)も0―4からの逆転勝利だったが、3日ヤクルト戦(神宮)でバント失敗するなど、1軍生き残りが危うかった江越が起点の四球(今季初出塁)を選び、打線に火をつけた。
こんなことが実に多いのだ。ミスを取り返す力について、スポニチ本紙評論家の広澤克実さんが自身のブログ『トラさんのちょっと虎話』で書いている。まだ開幕3連戦を終えたばかりの4月3日の投稿で、いわば予言していたわけだ。
<よく「野球はミスをした方が負け」という言葉を耳にする。実際はミスをしても勝つことはある。正しくは「ミスを取り返せない方が負ける」と思っている。野球にミスは付き物だ。重要なのはそれらを取り返せれば、何の問題もない>。
広澤さんはゴルフ用語「バウンスバック」も持ち出していた。ボギーか、それより悪いスコアで上がったホールの直後のホールで、バーディーかそれよりいいスコアをマークすることをいう。
<今年のタイガースはミスをしないチームではなく、ミスをすぐに取り戻せるチームになって欲しい。若い選手が多いチームだ。ミスをするな、と指導するより、ミスを取り返せとハッパを掛ける方が彼らにとっては良いはずだ>。
確かに、開幕前、高代ヘッドコーチは「ミスを責め立てる言い方をすると縮こまってしまう」と語っていた。「発展途上のチームだ。思い切って可能性にかけてみたい」。ミスに若さの可能性とみていたのだ。
金本監督も試合後、ミスについての質問に「それはもういい」「多少は大目に見ている」と寛容に構えている。
大リーグには「ミスをするのは選手。それを許すのがファン」ということわざがある。阪神首脳陣はただミスに目をつぶっているだけではない。バウンスバックは元もと「跳ね返る」という意味だ。「跳ね返り野郎」たちの反骨心が快進撃を支えていた。 (編集委員)
◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963年2月、和歌山市生まれ。桐蔭高(旧制和歌山中)時代はノーコンの怪腕。慶大卒。85年入社。大阪紙面のコラム『内田雅也の追球』は11年目。軟式少年野球でコーチを務め「敗戦や失敗から学ぼう」と伝えている。今春の大会で最終回、逆転サヨナラ負けを喫し、子どもたちは泣き、大人たちは痛飲した。
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