【石井一久 クロスファイア】ブーイングの後にはエール、リスペクトも…

2017年07月05日 10:46

野球

 時代とともにプロ野球の応援スタイルも変化してきた。2日の巨人―DeNA戦では、古巣相手に初登板となった山口俊が激しいブーイングを浴びた。2カ月前の5月7日には、楽天に移籍した岸が、メットライフドームでの西武戦で、やはりブーイングを受けた。ファンにとっては、ひいきチームを捨てていった選手。そういう感情はあって当然だが、なんとなくサッカーや海外のスポーツの応援スタイルをまねて、だれかれ構わず、移籍した選手への「仕打ち」的にやっているとしたら、違和感を覚える。
 日本はまだ「FA移籍=裏切り者」というイメージが強いが、移籍を決断するまでの経緯は人それぞれ違う。(1)自分をもっと高めるために環境を変えたい人(2)一番評価してくれる球団に行きたい人(3)プロだからお金を最優先に考える人――。岸の場合で言えば、(1)に加え、地元・仙台に恩返ししたいという思いもあり、後ろ髪を引かれる思いで、移籍の道を選んだ。

 西武相手に岸は7回2失点で勝利投手となったが、試合後のインタビューでは喜びを表すことなく、淡々と答える姿が印象的だった。愛着があり、恩義を感じている古巣相手の勝利は、複雑な気持ちだったと思う。サッカーでも、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウドは、古巣マンチェスター・ユナイテッドと初めてオールド・トラフォードで試合を行った時、ゴールを決めても一切喜ばなかった。そういう選手の気持ちも理解してほしいと思う。

 試合前のブーイングは否定しない。でも、最初にやられた時は、「これから新天地で頑張れ」というエールを込めて、拍手を送るとか、リスペクトする行為があってもいいのではないか。毎回、やる必要はない。最初の1回だけでいい。そういうオリジナリティーがあってもいいと、僕は思う。

 そういう僕も07年オフにヤクルトからFAで西武に移籍した。オープン戦で初めてヤクルトと神宮球場で対戦した時、一切ブーイングがなかった。移籍したことにファンが気づいていないのではないか、と思うくらい、静かでした…。 (スポニチ本紙評論家)

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