【石井一久 クロスファイア】英語を訳すだけではない…選手の「分身」通訳の二刀流

2018年04月25日 09:30

野球

【石井一久 クロスファイア】英語を訳すだけではない…選手の「分身」通訳の二刀流
大谷の通訳を務める水原一平氏(左端) Photo By スポニチ
 エンゼルスの大谷がテレビ画面に映る時には、いつもその隣に水原一平通訳の姿がある。日本人メジャーリーガーが活躍する上で欠かせないのは通訳の存在。通訳と言っても、ただ英語を訳せばいいというわけではない。選手と良好な関係を築くことができなければ、選手も余計なところでストレスを感じてしまう。
 通訳選びには、大きく分けて2つのパターンがある。大谷のように、日本で同じチームに在籍していたスタッフを連れて行くやり方と、球団が現地に住んでいる日本語を話せる人を雇うやり方。今年パドレスに入団した牧田は後者で、球団が通訳を公募し、決まった。

 前者の一番の良さは、選手の性格を熟知し、触れていいポイントと触れてはいけないポイントをしっかり分かっていること。米国人記者は、時には厳しい質問をストレートにぶつけてくることも多いので、それを遠回しの表現で伝えてあげることができる。日本で言う「わびさび」が分かっている通訳はありがたい。

 後者の場合、日本人であっても長く米国に住んでいて、感覚が「米国人」という人が多い。彼らは周りの選手と付き合うのがうまいので、日本人選手も早くチームに溶け込みやすい。先ほど言ったように通訳は選手の「分身」。通訳が受け入れられないと、その選手に影響を及ぼすこともある。

 僕のメジャー1年目の通訳は、日系人で、やや日本語が怪しかったが、必要な時以外はあえて一緒に行動しないようにしていた。その理由をこう話していた。「自分から英語で話しかけようとする姿を周りの選手は見ている。何でも通訳してしまうのは、石井さんのためにならないので」。彼は遠くで僕を監視していて、困った時になると寄ってきて通訳する。これが究極のサポートの形なのかもしれない。

 ちなみに、僕は1年目の時、打球が頭に直撃し、マウンドから救急車で搬送された。その際「頭に血が上るから、高枕にして」と通訳を頼んだが、「高枕って何ですか?」と聞き返された。確かに「高枕」という英語は野球には必要ない。そんな彼は今やドジャースで偉い立場になっている。(スポニチ本紙評論家)

おすすめテーマ

2018年04月25日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム