阪神が首位を「走る」確かな要因 矢野監督が植え付けてきた「意識」とは

2021年04月18日 08:00

野球

阪神が首位を「走る」確かな要因 矢野監督が植え付けてきた「意識」とは
4月1日の広島戦、4回無死一塁。佐藤輝が三飛に倒れたあと、すばやく二塁に進塁した阪神・サンズ(左は田中広) (撮影・奥 調) Photo By スポニチ
 【畑野理之の理論】プロ野球記録まであと3つのところで途切れてしまった。阪神は16日のヤクルト戦の2回にジェリー・サンズが二盗に失敗。チームは開幕から16企図連続で盗塁を成功させており、2リーグ制以降では1952年の国鉄の開幕から19連続成功に迫っていた。ちなみに72年の南海の17に次ぐ3位、64年の9を超える球団最長だった。
 貯金10で首位快走。開幕ダッシュ成功の最大要因は間違いなくチーム防御率1・99の投手陣だが、機動力も見逃せない。17盗塁はリーグ最多で、近本光司5、梅野隆太郎2、糸原健斗2、佐藤輝明2、中野拓夢2、江越大賀2、熊谷敬宥1、山本泰寛1。盗塁だけではなく、4月1日の広島戦(マツダ)ではマウンド付近への三飛で二塁ベースカバーがガラ空きだったスキを突いてサンズが一塁からタッチアップ(記録は野選)するなど走塁への高い意識が見られる。

 チーム打率・251はリーグトップだが辛うじてのレベル。チーム本塁打17も広島と巨人で並んでトップタイだが、決して目立つ数字ではない。それなのにリーグ最多の総得点77の理由は一つ先の塁を狙う積極走塁の積み重ねだと言いたい。

 野球を統計学で分析するセイバーメトリクスでは成功率が低いと得点に対する盗塁という作戦の効果が低くなると指摘している。5度の盗塁王に輝いた赤星憲広氏(本紙評論家)は効果があるのは成功率70%以上だとしている。現役時代の赤星氏は通算381盗塁、盗塁死は88で、成功率は81%と高かった。

 「盗塁は攻撃に勢いをもたらすものだけど、失敗すると流れを止めてしまうものでもある。だからやみくもに走って数を増やしたら良いというものではない。僕らの時は古田さん(敦也、ヤクルト)や谷繁さん(元信、中日)、阿部(慎之助、巨人)ら強肩捕手がたくさんいて、しかも投手陣にけん制やクイックなどを厳しく徹底させていた。でも今は、相手球団にあまりその意識は見られません。今年の阪神は研究も分析も十分にしているのでしょう。競った試合になるほど大きな武器になります」

 19年から指揮を執る矢野燿大監督は、就任する前年18年は2軍監督でウエスタン・リーグ新記録となる163盗塁。盗塁死も84あり成功率は66%だったが、アウトになってもいいから走れ…の方針が結実しようとしているのかもしれない。 =敬称略=
 (専門委員)

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