佐々木朗希の快挙と全柔連の小学生全国大会廃止と「大器晩成」

2022年04月20日 14:07

野球

佐々木朗希の快挙と全柔連の小学生全国大会廃止と「大器晩成」
10日のオリックス戦で完全試合を達成したロッテ佐々木朗 Photo By スポニチ
 【君島圭介のスポーツと人間】大器晩成型のヒーローは魅力がある。ボクシング映画の名作「ロッキー」がそうだ。バスケットボールに限らず、スポーツ漫画の金字塔「スラムダンク」の主人公・桜木花道も高校まで未経験者。人気野球漫画「ダイヤのA」の沢村英純も中学では地方大会で1回戦負け。
 埋もれていた才能が開花し、何かを成し遂げる物語に人は感情移入する。ロッテ・佐々木朗希が17日の日本ハム戦(ZOZOマリン)で完全試合の可能性を残した8回で降板。それでも批判は少なかった。思えば大船渡高時代に夏の甲子園をかけた岩手大会の決勝マウンドに上がらなかったときも議論は呼んだが、世論は好意的だった。

 全日本柔道連盟(全柔連)が「全国小学生学年別柔道大会」を今年から廃止すると発表した。「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」ことが理由だ。子供に過酷な減量や無理な増量を押しつける。体重別の競技が生んだ悲劇で、それを強いてきた指導者や保護者に対する全柔連からの厳罰だ。ただ、子供は競争が好きだ。小学生であっても日本一の称号は生涯の宝。それを目指す機会を奪ってしまうことが切ない。

 野球も甲子園レベルの強豪校に入るには全国大会に出場するようなシニアやボーイズチームで活躍する必要がある。そこに入るには小学生時代に高度な技術と身体的な素地を作らなければいけない。小学校低学年で競技を始めても出遅れる時代だ。ソフトバンクの千賀滉大などは奇跡的な存在で高校、大学まで無名で過ごせばプロ入りは難しい。

 「大器晩成」は大人物ほど成長は遅い意味と解釈されるが、中国の古典「老子道徳経」にある表現で、「大方無隅、大器晩成、大音希聲、大象無形。」が本来の表現だ。大き過ぎる空間は隅がないかのようで、大き過ぎる器は完成に時間がかかり、大き過ぎる音は聞き取れず、大きな過ぎる現象は全体像が見えないという意味だ。佐々木朗希の快挙や全柔連の小学生全国大会の廃止は、スポーツ界の未来において「大方無隅、大器晩成…」。今は全容が見えない。

 「スラムダンク」で、全国大会に出場した湘北高校の桜木花道は、王者・山王工業をあと1歩まで追い詰めながら、背中の負傷から監督の安西先生に交代を勧告される。花道は「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本の時か? 俺は……俺は今なんだよ!!」と拒否してコートに戻る。同作のハイライトで、誰もが花道の覚悟に涙した場面だ。ただ、今なら交代させなかった安西先生は非難の的だ。それも「大器晩成」。答えは出ない。(専門委員)

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