【スポニチスカウト部(28)】天理・戸井零士 聖地で輝いた大型遊撃手

2022年08月30日 06:10

野球

【スポニチスカウト部(28)】天理・戸井零士 聖地で輝いた大型遊撃手
今夏の甲子園で2戦8打数4安打とスカウトにアピールした天理・戸井 Photo By スポニチ
 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第28回は天理・戸井零士内野手(17)。主将も務めた今夏の甲子園では、攻守でレベルの高いプレーを披露。勝負強さと長打力を秘める大型の右打者だ。
 右投げ右打ち内野手の需要は高い中、大型遊撃手の戸井は、今夏の甲子園では計2試合で8打数4安打、打率・500。高い守備力も見せ、スカウト陣へのアピールに成功した。最後の夏を終えると、プロ志望届を提出する意向を示し「楽天の浅村選手のようになりたい」と宣言した。

 高校生活最後の試合となったのは、12日の海星(長崎)との2回戦。2点を追う8回2死満塁で打席を迎え、二塁頭上を越えそうな飛球を放ったが、惜しくも相手二塁手の決死のダイビングキャッチに阻まれた。「気持ちで当てにいった。海星の方が守備も一枚上手だった」と脱帽した。この試合は4打数1安打。「1点を取り切れなかったのが敗因」と、王手をかけていたチームの甲子園春夏通算80勝はならず、主将として責任を背負い込んだ。

 昨秋以降は、肉体改造に着手した。1日2キロの白米を平らげ、ウエートトレーニングも積極的に取り入れた。結果、10キロ近い体重増に成功。憧れの浅村だけでなく、同じ右打者のカブス・鈴木らの動画を日々研究し、自身の打撃に生かした。次のステージを見据え、さらなるレベルアップを図っていく。

 野球を始めたのは、小1時に祖父・加藤英男さんと観戦した日本ハムの試合で、ダルビッシュ(現パドレス)の投球に魅了されたことがきっかけだ。小学生時代にはその祖父が毎日のように打つノックを受け、守備力を磨いた。英男さんは戸井が天理入学前に誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなったが、入院中には、看護師に野球での活躍をうれしそうに報告するほど孫思いだった。戸井は生前の祖父と、「甲子園で日本一になってプロ野球選手になる」と約束。甲子園での日本一がかなわなかったが、もう一つの「プロ入り」の約束は果たしてみせる。(田中 健人)

 《「戦友」生駒の分まで 横断幕つないだ思い》今夏甲子園は「戦友」の思いも背負って戦った。奈良大会決勝で対戦した生駒は、複数人が新型コロナウイルス陽性の判定を受けた影響で、登録20人のうち12人を変更して戦った。試合は天理が21―0で大勝したが、戸井の呼びかけで喜びを表に出さずに整列した。この敬意に感銘を受けた生駒が「頑張ってほしいという思いを伝えたい」と保護者会を通じ、「つなぐ心ひとつに 天理高校野球部 生駒高校野球部一同」と記した横断幕を贈った。甲子園ではアルプス席に掲げられ、戸井は「全力プレーで伝わるものがあればいい」と話していた。

 ☆球歴 松原市立中央小2年からポルテで野球を始め、同5年から松原ボーイズに所属。松原三中1年時にはU―12侍ジャパンの一員としてW杯に出場し、首位打者を獲得。天理では1年秋からベンチ入りし、2年秋からレギュラー。高校通算13本塁打

 ☆侍ジャパン U―12日本代表として17年に台湾で開催された「第4回WBSC U―12ワールドカップ」に出場。チームは4位に終わったが、自身は外野手部門のベストナインと首位打者を獲得する活躍を見せた

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