担当記者が見た杉谷拳士という男 気さくで律儀な杉谷がくれたメッセージ

2022年10月28日 16:15

野球

担当記者が見た杉谷拳士という男 気さくで律儀な杉谷がくれたメッセージ
侍ジャパン・栗山監督から贈られた花束を手に涙する日本ハム・杉谷(撮影・高橋茂夫) Photo By スポニチ
 日本ハムの杉谷拳士内野手(31)が28日、札幌市内の球団事務所で会見を行い、今季限りで現役引退することを表明した。日本ハム担当の東尾洋樹記者が、杉谷への思いをつづった。
 最初の雑談は18年に日本ハム担当となって間もない頃だったと記憶している。写真撮影業務も兼ねて取材していると、練習の合間に「僕のいい写真ないですか?」と杉谷から気さくに話しかけてきてくれた。その頃はおそらく記者の名前も知らなかっただろう。人気者が気さくに接してくれたことが担当になったばかりの記者にとってはうれしかった。

 そこから付き合いが深まり、担当4年目に入った昨オフ。ある企画を杉谷に申し込むと、さまざまな事情が絡みその企画が実現しなかった。その後、杉谷が参加したイベントの取材に行くと、記者の顔を見かけた杉谷から歩み寄って開口一番「あの取材、受けられずにすみませんでした」と謝られた。律儀な男だと感じた。

 努力を重ねてきた野球人生だった。北海道茅部郡出身の父・満さんは、元日本フェザー級王者のプロボクサー。「父親がトレーナーみたいな感じで、朝起きたら走りに連れて行かれた」と少年時代を振り返ったこともある。帝京時代には甲子園通算51勝の名将・前田三夫監督に育てられた。「前田監督には人よりも食べさせられた。練習よりご飯を食べるのが憂鬱だった」と振り返るが、プロ入りに向けて必要な強い体ができあがった時期だった。

 幼少期から家庭で日本ハム製品の「シャウエッセン」を食べて育ち、その日本ハムに入団テストを経て08年ドラフト6位で入団。プロ野球選手として拾ってくれた球団に恩義を感じており、「日本ハム以外のユニホームを着ることは想像できない」と話したこともあった。

 プロ生活14年。現役引退の決断を下すまでに相当な葛藤があったことは容易に想像できる。28日の引退会見前夜。杉谷にメッセージを送ると返信の最後に「ユニホームを脱ぎますが、将来の自分に前進会見ですよ」と前向きなコメントで締められていた。自分の中で区切りをつけ、第2の人生に向けて気持ちの切り替えができたのだろうと察することができ、ひと安心した。明るいキャラクターで、球団の垣根を越えて全野球ファンに愛された杉谷。間違いなく記憶に残る選手だった。(日本ハム担当・東尾 洋樹)

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