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【内田雅也の追球】読みと一丸の準優勝

2024年09月30日 08:00

野球

【内田雅也の追球】読みと一丸の準優勝
<神・D>7回終了時、交代を告げるためベンチを出た岡田監督(左)と逆転打を放った佐藤輝(右)(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神7―6DeNA ( 2024年9月29日    甲子園 )】 4点差を跳ね返した7回裏の阪神逆転劇は見事だった。監督・岡田彰布も「逆方向へ逆らわずにね。相手も厳しい攻めをして来る場面。ああいう打撃をしてくれたら」とたたえた。糸原健斗、大山悠輔、佐藤輝明と3本の適時打はいずれも反対方向への一打だった。
 試合前練習中、一塁ベンチで岡田と雑談していた。ちょうど、チャンス(投手にとってはピンチ)の打席での考え方についての話になっていた。

 「相手も厳しいところを攻めてくる。その難しい球を待つんよ。待っていたらボールなら見送れる。もし甘い球が来たのなら反応で打てる。そういう読みやなあ」

 プロの投手がピンチで甘い球など放ってこない。得意な球を待って狙い打つというわけだ。

 ならば、あの7回裏、1点差と迫ってなお2死一、二塁で逆転決勝の2点三塁打を放った佐藤輝は、岡田の言うチャンスでの「読み」ができていた。投手は伊勢大夢。初球は内角高め150キロ速球(ボール)で体を起こされた。直後、外角低めフォークを左翼線にライナーで運んだのだ。

 試合後、岡田に「話していた通りの待ち方ができていた?」と問うと「おう、待っとったなあ」と笑顔が浮かんだ。佐藤輝の打撃がまた一段階上がったようである。

 優勝を逃して迎える一戦。緊張の糸は切れたかもしれない。ただ、岡田は「普通にやったよ。そんな急に変えたらおかしくなる」と手綱を緩めてはいなかった。

 名将と呼ばれた三原脩は<敗者には美学しかない>と著書『風雲の軌跡』に記した。<歴史は勝者によって語り継がれていく><敗者であるより、勝者たれ>である。

 ただ、アメリカには「野球では、勝てば栄誉が得られ、負ければチーム愛が生まれる」ということわざがある。岡田が時に口にする「みんなで」という言葉。昨年の優勝で見られたようにチーム一丸は今の阪神の美点だろう。5カ月ぶりに代打適時打を放った糸原が「全員があきらめない気持ちで戦っていた」とベンチの空気を語っていた。

 この勝利で2位が確定した。プロ野球にそんな言い方はないが「準優勝」である。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの甲子園開催も決まった。「あと1カ月、野球をやりたい」と岡田は言った。日本シリーズまで見すえていた。 =敬称略= (編集委員)

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