PFPトップ選考の舞台裏 常にインパクトの大きい勝ち方 尚弥こそ世界最高にふさわしい
2022年06月12日 05:30
格闘技
9日、一般公開よりも一足先に編集人のトム・グレイ氏から「井上1位」を告げられた時、同国人ボクサーの快挙に胸が高なったことは否定しない。ただ、日本人ゆえに井上に忖度(そんたく)したわけではない。パンデミック中こそやむを得ぬ事情で対戦相手の質が落ちたものの、プロデビュー以降の井上は常に上質な相手を圧倒してきた。今回、39歳になったとはいえ、将来の殿堂入りも確実な軽量級のスーパースター、ノニト・ドネア(フィリピン)を2回でKOし、キャリア最悪の惨敗を味わわせた強さは見事だった。
3つのベルトがかかった統一戦で、レジェンド相手にこれほどの勝ち方ができる選手は他に存在しない。すべて敵地で戦ってクルーザー級&ヘビー級を制覇したウシクのレジュメももちろん素晴らしいものの、ウシクの戦歴の中にはドネア、オマール・ナルバエス(アルゼンチン)級の実績を誇る選手への勝利は存在しないこと、井上は世界戦でよりインパクトの大きな形での勝利を挙げてきたことなどから、井上こそが現在世界最高のボクサーではないかと考えるようになったのだった。
欧米ではこのPFPづくりが人気で、多くの主要媒体が独自のランキングを発表している。最近のボクシングでは階級が細分化され、世界タイトル認定団体も増えて強さの序列がわかりにくくなった中で、全階級を通じて最も優秀なボクサーを選ぶという作業はファンの心をつかむのだろう。PFPでトップ10に入るとみなされたボクサーは一定の価値を認められ、多くの選手がそれを目標に掲げる。“現役最高のボクサー”である1位の選手は特別なリスペクトを得る。
中でも創刊100年の歴史を誇る専門誌リングマガジンのランキングは、雑誌の権威の高さがゆえに最も価値があるとみなされていた。リングマガジンのランキングは有識者投票による単なるポイント計算ではなく、オンライン上で議論がなされた上で投票という流れで決定される。チェーンメールによる意見交換の中で、パネリストたちは議論し、主張、順位を変えることもある。この民主主義的なやり方で決定されるランキングで、近年ではフロイド・メイウェザー(アメリカ)、マニー・パッキャオ(フィリピン)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)といった各国の英雄たちが1位に立ってきた。このランキングで井上が日本人ボクサーとしては初めて1位を獲得したことで、また新たな歴史が生まれたのだろう。
今後、世界のどこで戦うことになろうと、井上の紹介時にはPFPのNo・1ボクサーという形容が加えられる。アメリカのリングでも“現役最高の選手”として売り出されることになる。他のトップボクサーの動向次第で近日中にまた順位が変わる可能性も十分あるが、一度でも1位に立ったという実績は消えない。欧米では評価が低いとされる軽量級ではフライ級時代のローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)以来、久々にこの偉業を成し遂げたことで、井上のキャリアに大きな勲章が加わったことは間違いない。
おすすめテーマ
2022年06月12日のニュース
特集
格闘技のランキング
-
井上尚弥 「やれるなら年内に4団体統一、やりたい」 圧巻の宣言にスタジオ「すごい…」と感嘆のため息
-
井上尚弥 ドネア戦で見せた「マンガ超え」の瞬間「体が反応していた」 松本人志、河合ゆずるも仰天
-
井上尚弥 ドネア戦で「これは倒せる」と確信した瞬間 実感した2年7カ月前との決定的な「違い」
-
井上尚弥 ドネア戦で「2年7カ月前の悪夢がフッとよみがえった」瞬間 「そう来るならこっちもいくぞと」
-
井上尚弥 番組で松本人志におねだり 松本「そんなことでよろしいんでしたら…前向きに」
-
尚弥 日本人初の「PFP」KING ツイッターに喜び「誰もたどりつけなかった場所まで来た」
-
PFPトップ選考の舞台裏 常にインパクトの大きい勝ち方 尚弥こそ世界最高にふさわしい
-
京口V4!連続海外防衛、敵地メキシコで圧倒8回TKO 拳四朗との統一戦へまた一歩前進
-
浜田剛史氏 京口は初回に先手を取って自分の流れをつくることができた
-
拳四朗がツイート「京口選手おめでとう!!準備は整ったね」、統一戦へ意欲
-
京口の防衛をPFP1位・尚弥もツイッターで祝福「おめでとう」