大看板背負い36年…尾形充師 引退前に祖父に誓う800勝
2018年02月08日 05:30
競馬
祖父・尾形藤吉師は前人未到の大記録を打ち立てた日本競馬の草分け。通算1670勝、重賞189勝、日本ダービー8勝など旧八大競走39勝…。その孫として背負わされた「大尾形」の看板は調教師になった82年から十字架のような重しだった。「藤吉の孫なら、仕事ができて当たり前。祖父の名を汚さないように務めるのが使命だった」。尾形の名を継ぐ3代目の知られざる苦悩である。
米国のセリでゴドルフィン相手に25万ドル(約2750万円)で競り落としたグラスワンダーの春秋グランプリ3連覇。当代随一の目利きといわれた藤吉師の後継としての面目躍如だった。「あんなに走るなんて思ってなかった。馬主に損させないのが調教師の心得。現実にはなかなかうまくいかなかったが…」と笑う。
「馬を育てるには人を育てろ」。40人超の調教師、騎手を輩出した尾形藤吉師の教えだ。「私は沢昭典と柄崎将寿の2人しか育てられなかった」というが、日本調教師会の要職を歴任して競馬の環境を育てた。
引退まで3週を残して、管理馬の勝利数は799。現役4人目となるJRA通算800勝に王手をかけている。「喉から手が出るほど勝ちたいけど、簡単に勝てないのが競馬。たとえ799で終わっても“おまえの人生は良かったんじゃないか”って草葉の陰で思ってもらえるはず」。偉大なる祖父の墓碑に向かって再び手を合わせた。
◆尾形 充弘(おがた・みつひろ)1947年(昭22)9月27日、大阪府生まれの70歳。コンピューター関連会社を退職した75年、祖父・尾形藤吉師の厩舎で調教助手。82年、調教師免許取得。JRA通算799勝(7日現在)、重賞23勝、G1はグラスワンダーで97年朝日杯3歳S、98、99年有馬記念、99年宝塚記念。10〜12年に日本調教師会会長も務めた。