【ヴィクトリアM】初代V導いた藤沢和師のグランアレグリアに注目
2021年05月14日 05:30
競馬
そんな時、手綱を任されたのが北村宏司騎手だった。当時の彼は所属ということもあり、毎朝、藤沢厩舎の調教に乗っていた。しかし、まだG1勝ちもなく経験も浅い時代。レース本番では一流騎手に乗り替わるケースが多かった。それでも真面目な彼はこう思っていた。
「いつ任されてもきちんと仕事できるように準備は怠らないようにしよう」
10月には自厩舎のジャリスコライトで新馬、オープンを連勝するも、続くG1ではトップ騎手に乗り替わり。「さまざまな面で自分ではまだ足りないんだ」と痛感した。そんな時、依頼されたのがダンスインザムードだった。
「厩舎一丸となって立て直そうと必死だったので、僕も何とか先生の期待に応えたいといろいろ考えました」
天皇賞(秋)では2着した前年のC・ルメール騎手のレースへ向かう姿勢を参考にした。
「馬場入り後、他馬を皆、先に行かせてから自分のタイミングで返し馬に移すというやり方をまねしました」
結果、直線1度は抜け出して3着に善戦した。
「藤沢先生には“追いだしが早かった”と言われたけど、復調の兆しが見られたのは良かったです」
その評価に間違いはなく、翌06年にはヴィクトリアマイルを優勝。彼女の完全復活はデビュー8年目の北村宏騎手にとって初めてとなるG1制覇でもあった。
「それでもレース後に藤沢先生に“まだ仕掛けが早いな”と言われました。実際、尾を振っていたので反省しました」
勝ったからヨシではない伯楽の姿勢がよく分かるエピソードである。今週末のヴィクトリアマイルに藤沢師はグランアレグリアを送り込む。注目したい。(フリーライター)