【エリザベス女王杯】ナミュール100点 冬毛知らずのサザンカ 立冬迎えてもピカピカ毛ヅヤ
2022年11月08日 05:30
競馬
立冬の頃になると、多くの牝馬、特に古牝馬は牡馬よりひと足早く冬支度を始めます。体を冷やさないように冬毛も伸ばす。出産という大仕事を受け持つ母性の本能が働くせいですが、冬毛の交じった被毛は光沢を失って、くすんだ色に変わってしまう。今、エリザベス女王杯出走馬の毛ヅヤを見渡しても、少なからず冬毛をかぶっている。デアリングタクト、ジェラルディーナ、アカイイト、ウインキートス、テルツェット…。古馬勢の毛ヅヤは暖かい時季に比べて大なり小なり落ちています。
ところが、3歳牝馬ナミュールの鹿毛には1本の冬毛も交じっていない。秋華賞同様、抜群の毛ヅヤを保っています。季節の移り変わりに左右されないターフ界の常緑樹。繁殖に行かず、まだまだ現役を続けたい…母性本能よりも競走本能が強いせいなのか。それとも、よほど新陳代謝が活発なのか。ともあれ、抜群の体調。光沢のある毛ヅヤが秋華賞から中3週のローテでも不安なしと雄弁に語っています。
馬体の張りも秋華賞時から落ちていません。前後肢には母の父ダイワメジャー譲りの厚手の筋肉が隆起している。顔つきも穏やか。澄んだ目、ハミを柔らかく受けながら尾を自然に流している。秋華賞の接戦から中3週でも反動なし。心身両面で非常に充実しています。
ひとつだけ気になるのは半馬身及ばなかった秋華賞(2着)の4角での動きです。不自然な手前(軸脚)の運びで外へ膨れた。スピードが乗る勝負どころ。スムーズに回っていれば勝っていたでしょう。再び同じ阪神内回りコースで鞍上・横山武騎手が4角の難所をいかに乗り切るか。
常緑樹・山茶花のように立冬を迎えても色あせない鹿毛の馬体。その花言葉は「困難を乗り切る」。山茶花が大輪を咲かせる「山茶始開」の季節です。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。