【阪神JF】小栗師 史上7人目の快挙となる開業1年目G1初制覇へナナオ&プシプシーナの2頭流
2023年12月06日 05:30
競馬
今年3月に栗東で厩舎を開業して9カ月がたった。コンスタントに勝ち星を積み重ね、14勝は開業1年目の調教師としては美浦の上原佑師(15勝)に次ぐ2位。「もっと勝ちたい。勝てるレースもあった。現状に満足はしていない」。辛口ジャッジだが月別成績は3~5月が【3・1・1・35】、6~8月が【3・3・4・35】、9~11月が【6・4・5・40】と秋以降の活躍が光る。12月に入り、先週は2歳新馬モンブランミノルと2歳未勝利ナイトスラッガーが勝利した。「その馬に合った調整方法を見つける。固定観念にとらわれないことを常に考えている」と基礎を大事にしつつ、独自のスタイルで馬づくりに励む。
10月もみじSを逃げ切ったナナオはデビューから4戦4連対の堅実派。厩舎初の重賞挑戦となった2走前・函館2歳Sでは道中3番手で折り合うと直線、力強く脚を伸ばして0秒1差2着と見せ場をつくった。「心肺機能が高く、バテないのが強み」と持ち味を強調する。
今年、ロードカナロア産駒は全競馬場における芝1600メートルで24勝を挙げ、種牡馬別の勝ち星トップ。【24・26・20・154】で連対率22・3%、複勝率31・3%。前走から1F(200メートル)延長でも血統背景から距離をこなせる下地はある。「この中間は折り合い、スタミナ面などを考えて馬の後ろで我慢させる調教をしている」と対策はバッチリだ。
84年のグレード制導入以降、開業1年目にG1を勝った調教師は6人。勝てばスクリーンヒーローで08年ジャパンCを制した鹿戸師以来の快挙となる。「G1だし中途半端な状態では駄目。100%の仕上げで臨みます」と目を輝かせた。生まれ持った心臓の強さと自慢のスピードを武器に阪神の急坂を駆け上がる。
◇小栗 実(おぐり・みのる)1987年(昭62)2月4日生まれ、岐阜県出身の36歳。10年から栗東・鈴木孝志厩舎で調教助手を務め、7度目の挑戦で調教師試験に合格した。今年3月に開業し、同26日の阪神7RミツルハピネスでJRA初勝利。JRA通算147戦14勝。
《ナナオの担当ベテラン込山助手好勝負に期待》ナナオを担当する込山雄太助手は35年のキャリアを誇る腕利き。2日、54歳の誕生日を迎えた。込山助手は「この年齢になると年を重ねても、素直に喜べないね」と笑みを浮かべる。
88年、橋田満厩舎(今年2月末に解散)でトレセン生活をスタート。攻め専(調教騎乗がメイン)の調教助手として厩舎を支えた。99年ダービー馬アドマイヤベガ、03&04年エリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴなど数々の名馬の背中を知る。
2頭の世話をする持ち乗りの調教助手になってからは17年秋華賞、19年に英ナッソーSを制したディアドラを担当。19年ドバイターフ4着から約1年8カ月に及ぶ海外遠征にも付き添った。「いろいろな馬から、たくさん教わった。牡馬と比べて牝馬は繊細。馬房の中でも外でも必要以上に関わらず、馬の気持ちを優先させることが大事かな」と経験を生かしつつ、馬に接している。
ナナオは6月函館新馬戦の馬体重が408キロ。「初めてまたがった時、数字ほど小柄だと感じなかった。身のこなしが柔らかく、体幹がしっかりしている」。一戦ごとに馬体重は増え、前走・もみじSは新馬戦から16キロ増の424キロ。「この時期の2歳にしては、いい傾向。操縦性が良く、何よりセンスがある。G1で相手はそろったが頑張ってほしい」と期待を寄せた。何度も大舞台を経験しているベテランがこれまで培った技術を駆使し、ベストの状態に仕上げて本番へ送り出す。