アフリカにも広がる本田の夢、形問わない生きる力育むプロジェクト
2018年10月25日 10:27
サッカー
この教室は「機会に恵まれない子どもたち」に無料で実施。ウガンダではHIVで肉親を亡くした多くの子どもたち、ルワンダでは元ストリートチルドレン、ケニアではスラム街に住む子たちにボールを蹴る喜びを伝える。貧困層へのアプローチの過程で発掘された有望株には、各国の提携アカデミーでの継続的な練習機会を提供している。
未知の国での挑戦は、もちろん困難の連続だ。ケニアで“メッシ君”との異名を取った有望選手が、一家の夜逃げで練習に現れなくなったことがあった。現地スタッフが泥棒に入られたこともある。各国の提携アカデミーに引き上げられたのはケニア、ウガンダで各2人(18年10月時点)。文字通り狭き門だ。そんなシビアな現実があるが、サッカーを通じて夢を持つ大切さを伝えるのが使命。この教室ではお金やモノを一切、提供しない。二村氏は「子どもたちを受益者にしたくない。援助依存になり、自立の機会を失うことになる」と説明する。
シンデレラ・ストーリーは1つでなくていい。それがアフリカ事業での本田の願いだ。狭き門からあぶれた大多数の子どもたちに、この事業に協賛する日系企業がメカニック、プログラマーの養成講座を開くなど別の夢を持つきっかけを提供予定。マラソン選手を多く輩出するケニアでは、企業を巻き込みながら衛星教育や栄養指導を通じて子どもたちの生きる力を育むプロジェクトを進めている。
野球で東京五輪出場を目指すウガンダはJICA(国際協力機構)ボランティアの指導の下で急成長を遂げる。15歳で身長1メートル80、遠投100メートルを超える好素材が多く存在。才能を見逃さないためにも、サッカー&野球のコラボ教室も企画中という。無名の存在から成り上がったトットナムのケニア代表MFワニャマのような選手を発掘するのも大きな野望だが、この“本田ルート”で野球、マラソン選手、はたまたプログラマーなど多方面での才能が開花する可能性もある。
10年W杯。まばゆい輝きを放った本田は、アフリカの地で人生を変えた。17年6月にウガンダへ訪問。ビニール袋をバナナの皮でぐるぐる巻きにしたボールを子どもたちと蹴り、原点に立ち返ったという。オセアニア、アジア、そしてアフリカでも…。実現した夢を還元する男の成功を願う。(大和 弘明)