仙台が味わった「優勝」と「準優勝」の差 渡辺監督が持つ「危機感」とは
2019年01月01日 09:45
サッカー
見間違えでなければ、涙していたのではないか。その話題をぶつける。「コンタクトが乾いちゃってさ(笑い)」とおどけたが、「スーパーゴールだったし仕方ないかな」と前置きしてから思いを語ってくれた。「その前の押し込まれた時間帯をしっかり乗り越えられていたら違った。あとは自分たちが決定的なチャンスを作れていなかったのも原因の一つ。今季、ルヴァンカップはプレーオフで負けてしまった。リーグ戦にエネルギーを注いではいたが、天皇杯で上まで行きたいと思っていた。連戦でも石原(直樹)を起用して、選手にも勝ちに行くぞというメッセージを伝えた。決勝戦では埼玉スタジアムであそこまで素晴らしい雰囲気を作ってもらい、選手、そしてサポーターを喜ばせて終わりたかった。決勝で負ける、準優勝はこんなに悔しいのかと味わされた」。
もちろん、ただ単に反省して終了ではない。目線はすでに来季を見据えながら、様々な初体験を血とし、肉として吸収した。「タイトルを一つ取ったら違う、といろんな人が言う。タイトルと今までなんとなく言っていたものが、本当に取れるんだ、という実感に変わった日だったと思う」。そして続けた。「サポーターも含めて、2位では満足できないと何万もの人が感じられたのはすごい財産になる」。誤解を恐れずに言えば、ベガルタ仙台はJ1の中でもまだ小さな地方クラブではないだろうか。だからこそ渡辺監督は、関わる全員が「本気で優勝できる」と信じる大切さを説く。そして、そのために100%の努力を続けるには「俺たちにはできるんだ」という体験が必要なのだ。
さらに「危機感がある」と話しながら頂点に立つために足りないポイントをいくつか挙げてくれた。重要なのが「フィニッシュ時の怖さ」と「守備の手堅さ」。特に攻撃面で、ボールを動かしながらも最後の部分で精度を欠くのは悪癖の一つ。17年シーズンに4―4―2から3―4―2―1へと変更し、ビルドアップは上位クラブにも十分に通用するレベルまで引き上げられた。だが、得点につなげられなかったジレンマがある。
最後、渡辺監督は「意識革命」について言葉に力を込めた。「トレーニングに取り組む意識やオフ・ザ・ピッチの意識を劇的に変えないとダメ。一つ一つ当たり前のプレーにどれくらい意識を集中してやれるか。何度も言うようだが、劇的に変えないとタイトルにはたどり着かない」。
剛胆さと緻密さを兼備する指揮官に妥協はない。そして他から「無理だ」と浴びせられても諦めない。「クラブ史上、最もタイトルに近づいた」を「クラブ史上初の戴冠」に変えられると信じて。いつまでもサッカーと真摯に向き合い続ける。(記者コラム・古田土 恵介)
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