倉田安治氏 “サッカー大国”目指す中国で充実の日々「厳しく孤独だが、自由」

2019年12月28日 12:35

サッカー

倉田安治氏 “サッカー大国”目指す中国で充実の日々「厳しく孤独だが、自由」
大連監督時代に名将エリクソンと対戦する倉田氏(右) Photo By スポニチ
 経済大国として世界をリードする中国は、サッカーにおいても大国の仲間入りを目指して強化を続けている。自国リーグに世界クラスの選手や監督を招聘(しょうへい)。蘇寧電器がセリエAインテル・ミラノを買収するなど欧州ビッグクラブに出資する企業が多数あることからも中国の本気度が分かる。その中国サッカー界が最も力を入れているのが育成年代の強化。現在スペイン1部のエスパニョールで活躍する武磊ウーレイは上海の育成プロジェクトから輩出されている。
 中国の育成年代を指導して、結果を出し続ける日本人がいる。倉田安治氏(56)。現役時代はDFとして本田技研や読売クラブに所属し、日本代表でも活躍。引退後は福岡、神戸のヘッドコーチ、岐阜の監督などを務めた後、中国に活躍の舞台を求めた。12年にU―17遼寧省代表で全国リーグ優勝、13年にはU―18遼寧省代表を全国大会優勝に導き、14年には中国スーパーリーグ大連の監督も経験。19年は再びアンダーカテゴリーに舞台を戻し、U―15山東を率いてリーグ戦とカップ戦の2冠を達成した。その実績が認められ、U―15中国代表の監督候補にも浮上。山東はAFCから19年アカデミー優秀クラブとして表彰されている。

 文化や教育方針の違う異国での指導で、倉田氏は「ものの考え方を植え付けたり引き出したりすること」を最優先した。個人戦術やシステム論よりも「主体性(自主性、向上心、勝利への意志)」「行動規範(努力、規律、団結)」「心構え(謙虚さ、勇気、自信)」など精神面を重視。18歳以上の選手には「自分以外のために力を注ぐこと」「客観的に自分を見つめる力」「困難に意味や価値を見出す力」なども意識させた。

 もちろん技術や状況判断への働きかけもおろそかにはしていない。特に状況判断においては数的優位性、空間的優位性、個の質的優位性を見極める能力を伸ばすことに注力。5レーン理論、可変システム、ポジショナルプレーなどの最先端指導も取り入れている。

 スペイン人、ポルトガル人、ブラジル人、中国人のスタッフの中、日本人は監督を務める倉田氏しかいない。「多様性があって面白い。ぶつかる事も多いが、そこから肩を組んで進んでいける。外国人として働くのは評価も厳しく孤独だが、自由です」と充実した日々を過ごしている。

 南野(リバプール)、乾(エイバル)、久保建英(レアル・マドリード)ら多くの選手が欧州で活躍するが、欧州4大リーグで指揮を執った日本人はいない。アジアではタイ代表の西野朗氏らが活躍しているが、倉田氏のように各カテゴリーで実績を残している指導者は少ない。異国で結果を出し続ける事は想像以上にタフな仕事。倉田氏のような存在が増えていくことが、日本の指導者の底上げにつながる。

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