独記者が日本戦展望 ドイツ勝利予想も日本を高評価「浅野はドイツにほしい」
2023年09月09日 06:00
サッカー
「日本のサッカーは、欧州ではあまり注視されていないため、厳正な評価はできないと言わざるを得ない。
しかし、W杯を振り返ってみると、ドイツとの試合は間違いなく記憶に残る試合だった。
50~55分間は日本が明らかに劣勢に立たされたにもかかわらず、それでも諦めず、試合をひっくり返せると常に信じ、その揺るぎない意志で逆転に成功したことは印象的だった。
ドイツのサッカーファンの多くは、今でもそのことを覚えていると思う」
――W杯後、ドイツ国内で日本への見方は変わったか?
「確かに、日本のサッカー選手や代表チームに対するリスペクトは高まったと思う。それは確かだ。
そしてもちろん、サッカーファンは日本の選手には素晴らしいクオリティーが備わっていることをすでに知っている。
というのも、彼らは非常に信頼できるし、2、3試合に勝ったからといってふざけたプレーをせず、常に信頼できるパフォーマンスを発揮するからだ。
だからこそ、ブンデスリーガのクラブは、もし優れた日本人選手や日本代表選手と契約するチャンスがあれば、自分たちがそれで失敗することはないと分かっているので、契約しようとするんだ」
――今回のマッチメークが決まったドイツ国内の反応は?
「日本人を傷つけるつもりはないが、ドイツ代表は現在、世間一般から非常に認知されにくい状況にあり、日本戦は大きな反響を呼ぶことはなかったと思う。
どちらかといえば、あまり注目されておらず、夏のオフが終わってドイツの選手が今どんな調子なのかという感じだ。
正直にいえば、ドイツのサッカーファンはこの試合を本当に楽しみにしているとは言えない。ドイツと特にハンジ・フリック監督にとってはこの試合に非常に多くのことが懸かっているのにもかかわらずだ。
それは日本が原因なのではなく、どちらかというとドイツ国内で代表が飽きられていることと関係しており、この日本戦やその後に行われるフランス戦が世間ではまだほとんど注目されていない」
――今回のドイツ代表の長所、短所は?
「1つ目の問題は、ここ数年のドイツ代表は、自分たちに立ち向かって来るチームを相手に、あるいは明らかに拮抗した試合で、単純に多くのゴールを奪うことができないということ。W杯のの日本戦では、1時間近くドイツが優位に立ち、絶好のチャンスもあったが決めきれなかった。
2つ目の問題は、ギュンドアン(32)のように所属クラブで重要な役割を担っている選手が、代表チームでは必要とされるポジションにいない、あるいは単にシステムの中に隠れてしまって代表が必要とするプレーができないことだ。
守備も大きな問題だ。代表監督のフリックはここ数年、試行錯誤を繰り返し、22試合連続で異なる守備陣を起用しており、それが多くを物語っている。
強みは、選手たちには経験があり、国際舞台で多くの経験を積んでいること、そして多くの勝利を収めていることだ。しかし、彼らはどうしてもまとまらない。ドイツ語でいうなら、“ボンネットには大きな馬力を積んでいるのに、それを道路で発揮することができない”」
―ードイツがここまで不振を極めている原因は?
「不振とその理由についてはすでに少し触れたが、最近の失敗、特に6月の代表戦での不振は、それらの試合が、カタールW杯で中断され、非常に長く過酷なシーズンの直後に行われたという事実と大いに関係があるだろう。
あの時は、代表のために力を振り絞る準備ができていない選手が何人かいたように思う。
また、チーム内のヒエラルキーという点でも問題があるだろう。実際、誰が中心選手なのか?例えばヨシュア・キミッヒ(28)のように、リーダーの役割を担う選手も何人かいる。しかし、他の選手全員がそれを受け入れているかどうかは、今のところわからない。彼らがまとまっていないこと、それが最大の問題だと思う」
――ドイツのキーマンは?
「中盤がうまく機能し、ボールを縦に速く展開すること、ポゼッションの局面ではワイドへだけでなく、前へとプレーすることが重要なのは間違いない。
フロリアン・ヴィルツ(20)はそれを保証できる選手であるが、彼もまた、個のクオリティーは高いが、それが代表チームではまだ発揮されない選手の一例でもある。
フロリアン・ヴィルツは、その資質については議論の余地はないと思うが、代表チームでの役割をまだ見つけられていない。例えばカイ・ハーバーツ(24)のスピードと組み合わせれば、彼がキープレーヤーになり得る選手の一人だと私は思っているが、この短期間でそれがすぐに機能するかどうか、私は疑問を抱いている」
――フリック監督にとって日本戦の重要性は?
「もちろん、フリックと彼の立場はすでに世間で激しい議論の対象となっている。来年、自国で開催される欧州選手権でチームを託すにふさわしい人物なのか。次の大きな失望が待っているのではないかという大きな懸念がある。
フリックはここ数カ月、自分のプロジェクトや新しい選手を試していることも含めて、非常にうまくいっていない。全てがあまりうまく機能せず、もし日本戦でも失敗し、再び失態を犯せば、フリックの立場について厳しく議論されるだろう。
火曜日にはフランスと対戦するが、メンバーを見れば、最高の結果を期待できる相手ではない。もしこの2つの代表戦で満足のいく結果が出なければ、ドイツは代表監督の座を他の人に託すかもしれない」
―ー日本にはブンデスリーガ所属選手も多い。
「選手たちは普段からお互いを知っているし、互いに長所も短所もわかっている。もう大きな驚きはないだろう。
土曜日にウォルフスブルクで行われる試合では、激しい乱戦ではなく、おそらくボールポゼッションはドイツの方が多いだろうが、何よりもカウンターに対する守備では、数ヶ月前のカタール戦とはまったく違ったパフォーマンスを見せなければならないだろう」
―ー日本の長所、短所をどう分析しているか?
「日本チームの反発力には目を見張るものがあるし、走力も素晴らしい。そして、多くの日本代表選手が欧州のプロサッカーの厳しい日常を経験し、それが普通になっているからこそ、多くの部分で少なくとも対等にプレーできるのだと思う。
それに加えて、このチームの一体感がある。少なくとも私が見る限り、おかしな選手や、自分の方が優れていると思っているような選手はいない。それが日本チームの大きな特徴だ。
それは女子日本代表でもよく表れていたと思う。あのチームはこの前の女子W杯で私の大好きなチームだった。ボールを持たない時でも走り続ける姿勢は素晴らしいと思ったし、それが日本サッカーの特徴であり、これが彼らを相手にプレーするのが難しい理由だと思う。
正直言って、私は日本サッカーの大ファンになったよ。なぜなら、このチームは興奮することなく、ただひたすらプレーし続けるからだ」
――日本の注目選手は?
「遠藤航の名前が真っ先に挙がるのは言うまでもない。リバプールが彼を欲しがったのは決して偶然ではない。彼はシュツットガルトで傑出した働きを見せ、昨年はリーグ屈指の守備的な選手だった。完全に信頼ができる選手で、得点力もあり、ピッチに立つ彼はとてもカリスマ性がある。
私の好きな選手は、別のDF、板倉滉だ。私がボルシアMGのファンであることも関係しているだろう。先週末はバイエルン戦を観たが、彼はハリー・ケインに基本的には何もさせず、それが私にとってはとても印象的だった。
そして前線を見れば、彼らには常にクオリティーが備わっている。浅野はチャンスがたった1回あれば、2ゴールを決められる。そういう選手はドイツにも是非欲しいね」
――ドイツの先発予想は?
「ドイツ代表にはそれほどサプライズはないだろう。テア・シュテーゲンがゴールに入り、ディフェンスはほぼ自然に決まりそうだ。中央にはトニ・リュディガー、その隣にはおそらくニクラス・ジューレ、そしてサイドバックにはヘンリクスと、ロビン・ゴセンスが入る。
興味深いのは中盤だ。キミッヒの隣で中盤の守備的な役割を果たすのは誰なのか。ギュンドアンが出番を得るだろう。パスカル・グロースは日本戦で代表デビューを飾れるだろうか?彼はもう32歳だ。
前線には、おそらく下がってくるフォワード、カイ・ハバーツが入るだろう。フォワードの後ろの司令塔としては、私は間違いなくフロリアン・ヴィルツに期待している。サイドは、右にサネ、左がニャブリだろう。そうでなければ驚きだ」
――予想スコアは?
「今回も非常に接戦になると思う。また、ドイツチームにとっては我慢比べのゲームになるだろう。
間違いなく生まれる得点チャンスをゴールにつなげられるか、また、相手ゴール前での得点力不足に終止符を打てるかどうかにかかってくるだろう。
観客はどう振る舞うだろうか?ウォルフスブルクのファンはとにかく非常に控えめで、どちらかというとイベントを楽しむ観客だから、喧騒的な雰囲気にはならないだろう。
私は魅力的なサッカーを期待しているし、最終的には1点差でドイツが勝つと思う。3―2と言っておこうか。良いサッカーの夜になりそうだ」
≪オッズ5・5倍≫昨年のW杯カタール大会に続くドイツ連破を狙う日本だが、下馬評は依然として圧倒的不利だ。英ブックメーカー大手ウィリアムヒルによるオッズは日本の勝利が5・5倍。一方、ドイツ勝利が1・5倍で、引き分けは4・2倍となっている。ただし、W杯対戦前のオッズは日本勝利7倍だったので、評価は上昇したといえる。当時、ドイツ勝利が1・44倍、引き分けが4・4倍だった。
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