高齢者に多い眼の病気「網膜静脈閉塞症」 静脈詰まって出血する前に、カレンダー代用セルフチェック!
2023年11月17日 05:00
社会
富田先生、網膜静脈閉塞症とはどんな病気ですか?
「眼にも動脈、静脈がありますが、静脈が詰まる病気です。大本の太い静脈が詰まるのを網膜中心静脈閉塞症、そこから枝分かれしていく細い末梢(まっしょう)が詰まるのを網膜静脈分枝閉塞症と言います」
高齢者に多いとは、気になります。
「高齢者で発症する方は網膜静脈分枝閉塞症が多く、生島さんもこのタイプでした。年齢とともに増えてきます。緑内障は40歳以上で約5%と言われていますが、網膜静脈閉塞症は40歳以上で約2%というデータがあります」
原因は何でしょうか?
「まず加齢が挙げられますが、血管の病気なので、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など動脈硬化を引き起こす病気との関係が考えられます。喫煙の影響も指摘されています。眼を酷使することとは、あまり関係がありません。高血圧は特に注意が必要です」
高血圧は要注意ですか。私は最高血圧が130を超えるぐらい。145を超えることもありますが、薬が必要とまでは言われていないのですが。
「これまでは高血圧症が要注意と言われておりましたが、最近は130mmHg以上でも発症リスクが高いと言われています。ただ、網膜静脈閉塞症のことだけを考えて血圧を下げすぎると、脳に悪影響を及ぼすこともありうるので、血圧のコントロールはかかりつけ医(内科医)とよく相談してください」
予防法はありますか?
「まず血圧のコントロールです。網膜静脈閉塞症は血管が詰まって、出血してから気づくことが多いのが特徴です。日頃からのチェックが大事。眼の疾患のセルフチェック用で、マス目のシートの中心の黒丸を見つめるアムスラーチャートをご存じの方も多いと思います。セルフチェックはこのアムスラーチャートでなくても、身近なものでもできます。カレンダーです。月間カレンダーの真ん中の日付、15日前後が多いと思いますが、片側の眼でその日にちを見つめ、もう片側の眼は手で覆います。同じことを別の眼で。どこかの日付がゆがんでいたり、一部が欠けて見える場合は、眼科医に相談してください」
カレンダーなら、職場にも家庭にもありますから、いつでも気軽にチェックできますね。
「人間は基本的に両眼でものを見ています。片側の眼の視野が欠けていても、別の眼がそれを補うので、気づかないことが多い。片眼ずつチェックするのは、そのためです」
治療法はどんなものがありますか?私の場合は注射をしていただきました。
「黄斑浮腫が現れた場合、抗VEGF剤の硝子体注射があります。VEGFは、血流が詰まった網膜に、新生血管と言われる新しい血管を作ることを促す物質です。一見、新しい血管が生まれるのは良いことのように思えますが、この新生血管はもろいため破れやすく、出血を起こしやすい。この注射で新生血管が作られるのを防止します。短時間で済むので、注射は日帰りです。場合によってはレーザー治療が必要な場合もあります」
このVEGFがくせ者なんですね。
「新生血管が虹彩にできると眼圧が高くなり、緑内障になることもあります。結果的に失明につながる場合もあります」
緑内障にも関係しているとは、放っておいたら大変です。人生100年時代。大事な眼を守るために、まずは血圧コントロールと“カレンダーチェック”から始めましょう。