不屈の藤永 初マラソンV!2度離され大逆転

2009年03月09日 06:00

マラソン

不屈の藤永 初マラソンV!2度離され大逆転
初挑戦となった名古屋国際女子で優勝、2時間28分13秒でゴールする藤永佳子
 8月の世界選手権(ベルリン)代表選考会を兼ねて名古屋国際女子マラソンは8日、名古屋市瑞穂陸上競技場発着のコースで行われ、初マラソンの藤永佳子(27=資生堂)が2時間28分13秒で優勝し、代表に内定した。先頭集団から2度離されたが、粘りの走りで37キロ地点で大逆転。長崎・諫早高時代の99年世界選手権(セビリア)に出場した逸材が、苦難の時を乗り越えて復活した。昨年10月に引退し“ありがとうラン”として参加した00年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さん(36=ファイテン)は2時間52分23秒の29位だった。
 最終コーナーでサングラスを外した藤永の顔から、ようやく笑みがこぼれた。両手を広げて歓喜のゴール。かつて天才少女と呼ばれた27歳はチームメートと抱き合いながら「長かった。素直にうれしい」と大粒の涙をこぼした。
 4人の先頭争いから25キロ手前で遅れたが「労力を使わないように冷静にいこう」と自らのペースを守り、28・5キロ地点で先頭集団に復帰。30キロ手前で新谷にスパートをかけられ、一時は100メートル以上離されたが「ここまで来たら優勝したい」と粘りに粘って37キロ手前で大逆転した。
 99年に五千メートルで世界選手権に出場。超高校級と騒がれた逸材は筑波大、資生堂で肩の脱臼、アキレス腱痛、両ひざの疲労骨折と度重なる故障に悩まされ続けた。「負のスパイラル」(弘山監督)にはまり込んだ自分が嫌になり、何度も陸上をやめようとした。だが、30、40キロ走でマラソンへの適性を見抜いていた弘山監督は「今やめたらもったいない。マラソンなら一からやり直せる」と諭し、故障の原因となっていた太りやすい体質を時間をかけて食事療法で改善。ウエートトレで少しずつ42・195キロを走れる体に変えていった。精神面を強化するため、滝に打たれたこともあった。だが、初マラソンを予定していた08年1月の大阪国際は、ひざを痛めて断念。今年1月の大阪国際も、また調整不足で回避を余儀なくされた。
 三度目の正直でスタートラインに立った今回も、不安はぬぐえなかった。そんな非運の天才を勇気づけたのは、この朝に関係者から手渡された弘山晴美の手紙だった。「自分の思いのままに思い切り走りなさい」。あこがれの大先輩からのアドバイスで勇気づけられた27歳は、ついに「負のスパイラル」を断ち切った。
 10年前の世界選手権は予選落ちだった。「あの時は何も分からずに行った。今度はちゃんと準備して成長した姿で世界を楽しみたい」。苦難の先にたどり着いたゴールは、藤永にとって新たなスタートでもあった。

 ◆藤永 佳子(ふじなが・よしこ)1981年(昭56)8月15日、長崎・北松浦郡佐々町生まれの27歳。諫早高―筑波大。佐々中1年から陸上を始めた。高校時代には全国高校駅伝で2、3年時に2年連続1区で区間賞。99年世界選手権五千メートル代表。大学1年時には日本選手権五千メートルで優勝。1メートル70、55キロ。血液型O。

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