続々と若手が台頭するフィギュアスケート界 先駆者の苦労があればこそ
2016年11月29日 11:15
フィギュアスケート
日本のフィギュアスケート界は92年のアルベールビル五輪で伊藤みどりが史上初めて銀メダルを獲得して喜びに沸いたが、関係者にとっては「銀メダルしか獲れなかった」のが本音だった。当時の伊藤は世界でただ一人トリプルアクセルを跳ぶことができ、89年の世界選手権で日本選手として初めて金メダルを獲得。アルベールビル直前のラリック杯でも優勝するなど周囲は金メダル獲得に大きな期待をかけていた。しかし、伊藤は初日のオリジナルプログラムで転倒して4位と出遅れ、翌日のフリーでトリプルアクセルを成功させたものの惜しくも2位に終わった。金メダルが獲れなかった最大の理由を「伊藤一人に重圧がかかりすぎたため」と判断した連盟サイドは若手の有望選手を多数発掘して選手層の底上げを図った。その一つの手段が前述の発掘合宿だった。
わずか数日の合宿ですぐ技術が向上するわけはないし、直接選手層の底上げにつながるわけでもない。しかし、体力測定や陸トレなど普段はあまり行わないトレーニングを通じて自分の長所や短所を知り、同世代のライバルたちと接することによってさまざまな刺激を受けたことが、その後の成長過程で大きな財産になったであろうことは想像に難くない。
92年当時の伊藤は本当に一人ですべての重圧を背負い込んでいた。もし同レベルの選手がもう一人二人いたらまた違った結果になっていたかもしれないと思うと今でも残念でならない。しかし、そのおかげで層の厚い今の日本フィギュア界が生まれたのだとすれば、伊藤の苦労も無駄ではなかったことになる。平昌ではぜひ男女ダブルでの金メダルを期待したい。(編集委員)
◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。
おすすめテーマ
2016年11月29日のニュース
特集
スポーツのランキング
-
五輪テレビ中継 ドイツ公共放送と交渉決裂 契約料で折り合わず
-
ロシア陸連の組織再建を報告へ 国際陸連のチーム責任者
-
46歳レジェンド レバンガ折茂 日本人初「9000得点」
-
来季国内男子ツアーで「マッチプレー」14年ぶり復活へ
-
ウッズ 復帰戦でブリヂストン球 ナイキ撤退でクラブは選択中
-
笠「震災を力に」熊本県庁を訪問 大会主催者ら1000万円贈呈
-
横審“不思議な大関”稀勢の里に注文の嵐 和製横綱へ期待の裏返し
-
横審・守屋委員長 鶴竜には高評価 豪栄道は「力不足だった」
-
鶴竜 「何か一つ足りない」稀勢にエール「それが分かれば上がれる」
-
春日山親方控訴審、話し合い継続へ 一審では1億7160万円請求
-
桃田 協会処分解除へ 来年5月にも復帰 東京五輪に望み
-
未成年飲酒 新たに強化指定選手1人を発表
-
美誠ら4選手が無事“再出発” 書類不備で離日延期
-
大坂なおみ 日本代表初選出濃厚 合宿参加へ準備
-
太陽誘電・藤田倭がMVP 投打二刀流で“3冠”
-
日本代表が欧州から帰国 山田12・4TL再開初戦出る
-
全国高校ラグビー シード校発表 東福岡など選出
-
高橋大輔さん、氷上で“かっこよく”義経に
-
姫路に真鍋GM誕生 元日本代表・竹下監督も「心強い」
-
野口が総合2位 男子は藤井が3位
-
暁斗3位 今季初表彰台 W杯複合第2戦