「心」で勝ち取った稀勢の里の奇跡の優勝
2017年04月06日 09:00
相撲
左腕はどこまで回復したのか。それを確かめるため、稀勢の里が場所に向かうために大阪市港区の田子ノ浦部屋宿舎部屋から出てくるまで、約5時間待った。着物を着ているため患部の状態は分からなかったが、歩くときに左腕は振っていた。場所入り後の横綱土俵入りでは患部をテーピングで固定しており、かしわ手を強く打てなかった。だが、左腕はしっかりと動かせていた。ここで確信した。どういう結果になろうと、稀勢の里は千秋楽まで土俵に上がり続けるのだろうと。
初場所の初優勝、その後の横綱昇進の際に「一人ではここまで来られなかった」という言葉を何度か口にしていた。支えてくれる人たちのためにも結果を出したい。稀勢の里がそういう気持ちを秘めている男だということは、稀勢の里の取材歴が1年足らずでも分かる。ケガを悪化させるリスクがあったとしても、優先させるべきものがあれば挑んでいく。気持ちだけで勝てるほど相撲は甘くないが、気持ちがなければ勝てないのも相撲だ。ほとんどやったことのない右からの小手投げを決めた決定戦は「心技体」の「心」で勝ち取ったと言っても過言ではないだろう。表彰式を終えた後の支度部屋での記念撮影では、賜杯を抱く左手が震えていた。「体」はぎりぎりの状態だった。
出場に前向きだった春巡業はひとまず休場となったが、回復次第では途中参加もあるという。春場所の初日からの12連勝は「体」と「技」による部分が大きかったはず。左からの攻めは稀勢の里の生命線とも言えるだけに、今は「休む勇気」に切り替えて、しっかり治すことに集中してもらいたい。(専門委員)
◆佐藤 博之(さとう・ひろゆき)1967年、秋田県大曲市(現大仙市)生まれ。千葉大卒。相撲、格闘技、サッカー、ゴルフなどを担当。スポーツの取材・生観戦だけでなく、休日は演劇や音楽などのライブを見に行くことを楽しみにしている。
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