ゲーム愛好者を活用 台湾の官民一体となったユニーク戦略とは
2018年06月02日 05:30
スポーツ
台北市の市街地にある総合家電モール「三創生活園区」。日本の秋葉原のような電気街をイメージして15年にオープンした店内には、eスポーツをテーマに据えたテナントが3店舗もある。運営企業はPCおよび周辺機器を製造するエイスース、PCマザーボードのエムエスアイ、マウスメーカーのロジクール。いずれも世界に名をはせるIT系企業で、成長著しいゲーミング用PCの分野に積極的に進出している。
テナントはeスポーツを開催できる設備や配信ブースなどを備えており、週末にはプロ・アマのさまざまな大会でフル稼働する。モールに立ち寄る人々の目にも触れる機会が多く、台湾でeスポーツが推進していることを象徴する場ともなっている。
台湾では03年からゲーム開発企業が新作タイトルをお披露目する「台湾ゲームショウ」を開催している。今年1月の開催時には275の企業・団体が参加するなど、現在では世界のゲーム市場に対してショーケースとして大きな存在感を示している。同イベントを統括する黄(ユン)ペイフアン氏は、企業と来場者たちとの交流が出展タイトルに好影響を及ぼしていると指摘する。
「台湾のゲーマーは世界中の面白いゲームを旺盛に遊んでいるので、目が肥えています。来場者たちは実際に出展されているゲームに触れて、感想や改善点を企業に直接伝えています。そうした意見を企業がゲームの開発や修正に反映させると、より面白くなって商品力が高まるケースが多いのです」
海外から入ってくる製品をブラッシュアップして、付加価値を高めて世界市場に再び送り出す――その過程は、パソコンなどIT機器の組み立て・加工で経済力を高めた台湾の“お家芸”に通じるものがある。台湾のゲーム愛好者たちの潜在力をさらに引き出すため、台湾政府もeスポーツの潮流を積極的に活用しようとしている。
「昨年には台湾政府が、eスポーツを産業の一分野を担うジャンルとして認定しました。日本で文部科学省に相当する官庁に、eスポーツを所轄する部局があります。企業がプロ選手に支払う報酬に税金の優遇控除をするなど、政府も支援を押し進めています」(黄氏)
日本と同様に、ゲームに過度に熱中する子どもを親が良く思わない社会的な背景もまだまだあるという。台湾がeスポーツを有望な産業として育成しようとするとき、ヒーローとして脚光を浴びるプロ選手たちは、ゲームに対する負のイメージを払しょくする希望の存在となり得るのだ。
異文化を融合させて面白くなるゲーム、eスポーツ、プロ選手たちの華麗な戦い――。そうした時代の先端を走るモンストにも、あらためて期待が高まっている。
「モンストが台湾でも新しいeスポーツのタイトルとなっていくことを期待しています。台湾ゲームショウでもeスポーツは取り上げています。ぜひ今度はここにも参加してもらい、台湾のゲーマーたちと交流の輪を広げてほしいです」(黄氏)
元気よくはじけて飛んで、仲間を巻き込んでいく“怪物弾珠”。加速度は止まらない。(終わり)
≪名門大生もコミュニティー大会≫モンスト台湾大会が開催された翌13日、三創生活園区のエイスースのeスポーツフロアでは、台湾大学法学部の学生たちがコミュニティー大会に興じていた。「リーグ・オブ・レジェンド」などの人気タイトルで、学部生や卒業生たちの親睦を深めるサークル的な活動を始めたという。同大は、台湾の最難関校として知られている。主催者の男子学生は「勉強をしっかりすれば親にもとがめられないし、学業には差し支えありません」と涼やかに笑っていた。
▽モンスターストライク 2013年から展開するスマホアプリゲーム。プレーヤーは4体のキャラクターを扱って、敵軍団の撃破を目指す。各キャラクターは、スマホ画面上で指を使って弓矢のように引っ張って撃つ感覚で操作。スマホ画面四辺での反射、キャラクター同士のぶつかり合いなど、ビリヤードのような戦略性を要求される。競技大会は4人で構成するチームによる対戦。敵が出現するフィールドをリレー形式でクリアして、両チームがタイムアタックを競う。
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