“守りの尾道”魂のタックルで被災地に届けた1勝
2018年12月29日 08:47
ラグビー
「守りの尾道」を体現する男がいた。ロック西尾鴻志が速い出足でタックルを浴びせる。本郷が得意とするのは展開。その芽をつぶした。雪がちらつく後半9分に苦悶(くもん)の表情で退いた。肩に痛みを抱え、「恐怖心をなくすのは声を出すしかない。それを信じて声を出してプレーしました」と、体を張り続けた。
接戦と思われた1回戦屈指の好カード。40―12と差がついたのは、西尾を筆頭に、全員がタックルの雨を降らせたからだった。
仲間のために犠牲になる。その精神を、この夏改めて学んだ。7月に豪雨災害があった。尾道市も大きな被害を受け、ラグビー部は、市内の道路や家屋の土砂かきのボランティアを連日行った。学校がある向島は断水が続いた。給水スポットでポリタンクに水を入れ、老人家庭に運んだ。
「行動して手助けをする。そういう経験をして、ラグビーでは自分から体を張ろうと思うようになりました」
西尾はそう振り返った。災害支援は、尾道にとって初めてではない。2年前の豪雨、東日本大震災の後も被災地に行った。梅本勝監督(55)の哲学がそこに詰まっている。
「ボランティア活動が、ラグビーの精神をつくる上で1番大事でしょう。サポート、カバー。その精神です」
指揮官は、今年度で学校をやめて倉敷高(岡山)へ移る。浅いラインからの速い仕掛けの守備で、広島から全国の強豪を脅かしてきた。西尾は力を込める。「監督のラグビーを最後に完成させたい。シャロー(浅い)ディフェンスで前で止める、です」。2回戦は石見智翠館(島根)との中国対決。全員がタックルの鬼になる。(倉世古 洋平)
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