追悼連載~「コービー激動の41年」その85 引退から「運命のあの日」へ
2020年05月11日 08:00
バスケット
バネッサ夫人は「引退してからさらに2人の娘に恵まれ、本を書いて、オスカーも獲りました。引退したあとの3年9カ月を彼は本当に楽しんでいました」と回想したが、まさに充実の日々を送っていた。
しかしあの悪夢の日を迎えることになった。
レイカーズにとってはチーム史上これが60年ぶり2度目の重大な航空事故。詳細は後述するが、最初にアクシデントに見舞われたのは1960年1月18日だった。当時ミネアポリス(ミネソタ州)を本拠にしていたレイカーズは、遠征先のセントルイス(ミズーリ州)からホークス戦を終えて、貨物機を改造した専用機(DC―3)でホームに帰る途中だったが、電気系統の故障で専用機のコンパスが使えなくなった。操縦士は道路への着陸を試みようとしたものの強風と視界不良で断念。しかし副操縦士の判断で雪が積もったアイオワ州のトウモロコシ畑に不時着して難を逃れた。50センチの積雪がクッションとなって全員の命が助かった。
だが2020年1月26日、ブライアントら9人(パイロットを含む)を乗せた中型のヘリコプターは墜落。濃霧の中で不可解な動きをして時速300キロで地面に激突してしまった。
事故の詳細を記しておこうと思う。ロサンゼルスの北西48キロに位置しているカラバサスの傾斜地に墜落したヘリコプター「シコルスキー・S―76B」は、シコルスキー・エアクラフト社(本社・米コネティカット州ストラトフォード)が開発した双発ターボシャフト・エンジンの中型ヘリコプター。流線形でデザイン性に優れており、報道、警察用だけとしてでなくセレブ用や遊覧用にも使われている。
日本の航空専門家によれば、この機種は操縦性や安定性に優れており振動も少なめで、海上保安庁や民間航空会社などでも採用。ただし1990年に民間航空会社の一機が神奈川県の山間部に衝突し、1998年には海上保安庁での救助訓練中に故障が発生したとされている。パイロットにとって生命線となる計器盤の位置が高く、前方への視認性がいまひとつという見方もあるので、一般的なヘリとは少し構造は違うようだ。
墜落機は1991年の製造で、2015年まではイリノイ州が所有して知事らの移動用として使われていた。そしてカリフォルニア州フィルモアに本社があるアイランド・エクスプレス・ホールディング社が2016年3月に購入。買い取った際にそれまで12あった座席を8に減らしており、今回は満席だった。
米運輸安全委員会(NTSB)では、派生機のひとつ「シコルスキー・S―76A」が2004年に墜落事故を引き起こしているのを受けて「S―76B」にも激突警報装置の装備を推奨していたが、アイランド・エクスプレス社は採用しなかった。また購入時はボイスレコーダーがコックピットに設置されていたが、同社はこれを撤去。結果的に欠いていた2つの装備が事故とその原因究明に関して大きな影響を与えることになった。
では“運命の日”を振り返ってみる。ブライアントはこの日の朝、「マンバ・スポーツ・アカデミー」に行く予定だった。ここで開催されるユース・バスケットボールの試合に13歳の次女ジアナさんが出場するためで、ブライアントは娘のいるチームのコーチ。それはどこにでもある日常のひとコマになるはずだった。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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