セーリング土居愛実 誰かのためなら帆を張れる 延期で折れた気持ち…周囲の声で迷い消えた

2020年08月19日 05:30

セーリング

セーリング土居愛実 誰かのためなら帆を張れる 延期で折れた気持ち…周囲の声で迷い消えた
リオ五輪セーリングの女子レーザーラジアル級に出場した土居(AP) Photo By AP
 【2020+1 DREAMS 】 セーリングのレーザーラジアル級で3大会連続の五輪出場を決めている土居愛実(26=アビーム)は、延期を簡単には受け入れられなかった。20位に終わったリオ五輪後に「次が最後」と決めた集大成の場。「ガーンって感じです。あとちょっとだからと追い込んできたのに…」。17年世界選手権3位で同クラス日本人初のメダルを獲得した実力者でも、弱気になった。
 帆が小さく速度が上がりにくいレーザーラジアル級は体力勝負で「みんな乗りたがらないキツい」艇種。年齢的なピークを感じつつ「これ以上頑張れないところまで頑張ってきた」からこその迷いは、13年から師事するオーストラリア人コーチのアーサー・ブレット氏のひと言で吹っ切れた。「愛実がやるなら一緒にやるよ」。本来なら今夏までの契約だったブレット・コーチの言葉に、「サポートしてくれている人たちのためにもう一回頑張ろう」と思えた。

 「お兄ちゃんっ子」だった土居は、リオ五輪男子470級代表の兄・一斗(28=アビーム)の背中を追って小2から海に出た。当時のコーチの「ジュース20本あげるから」という甘い誘いにつられて競技を始めたが、海面を滑走する楽しさにのめり込んでいった。兄より先にロンドンで五輪デビューを果たし、リオは念願の兄妹出場。普段は競技の話をすることはないが、兄は東京五輪出場を逃した際に「やっと愛実をちゃんと応援できる」と漏らしたという。土居は「今まで悔しさがどこかにあったんだと思います」と代弁しつつ、兄の常とう句となった「メダルちょうだい」に今度こそ応える覚悟を決めた。

 自粛期間中はフィジカルトレーニングに励みながら、ブレット・コーチとテレビ電話で戦術面などを研究。5月末、再び海に出た。練習相手を求めて海外で力を伸ばしてきた土居にとって、日本での練習は試行錯誤が続いている。だが、腹はくくった。「やると決めたからには金メダルを獲りたい」。レーザーラジアル級初の偉業は、荒波の先にある。

 ◆土居 愛実(どい・まなみ)1993年(平5)8月29日生まれ、横浜市出身の26歳。小学2年から横浜ジュニアヨットクラブで競技を始める。山手学院高―慶大。高校2年時のユース世界選手権で銀メダル。ロンドン五輪は31位、リオ五輪は20位。17年世界選手権はレーザーラジアル級で日本人初のメダル獲得。兄はリオ五輪470級代表の一斗。1メートル67、66キロ。

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