張本も期待 職人の「誉れ」塗りこめた輪島塗の卓球台 漆黒の輝き
2020年08月19日 05:30
卓球
能登半島に制作依頼が届いたのは、19年12月。余門さんは「職人稼業をしていて、こんな話をもらえるのは誉れ」と、例年ならゆっくり過ごす正月を返上して自宅にこもった。輪島市内の工房での作業を避けたのは、「極秘」だったからだ。
輪島塗は7つの工程を経て作品ができる。余門さんは、3工程目「下地」の職人。めったに扱わない2メートル近い特注品のために、へらなどの工具を制作した。完成品の出来栄えを左右する土台となる漆を幾重も塗り込んだ。
漆器需要の減少で、輪島塗産業は低迷が続く。後継者問題も横たわる。今回の五輪との“コラボ”は、伝統を守る点でも希望の光。「時代に合った漆器を作らないといけない」と語る余門さんは、用途の拡大を期待する。
輪島塗にオファーを出した卓球台の老舗メーカー三英の三浦慎社長(58)は、業界の革命児である。「卓球のネクラのイメージを変えたい」と、テレビ映りを意識した台、「ショーコート」を01年に世界で初めて製作。モニター入りの台などを打ち出した。黒か、黒板のような緑が定番だった台の色に、「青」という新風を吹き込んだのも、同社だ。
技術の高さは、元々海の向こうに知られている。北海道足寄町で生産する台は、世界唯一の独自技術で板の反りを抑え、長さ2メートル74、幅1メートル525のどの部分で球が跳ねても均一になるよう、職人技が詰まっている。
16年リオデジャネイロに続いて2大会連続で五輪の台に採用された。「モティーフ」と名付けられた東京用の台もメード・イン・ジャパンにこだわった。東日本大震災からの復興を願い、東北地方の木材をT字形の脚部に使用。輪島塗の装飾も、日本の魅力を伝えるためだ。「物作りは思いが形になっている。それらを世界に発信したい」と三浦さん。和の要素が凝縮した台で日本勢が活躍すれば、自国開催にふさわしいストーリーが完成する。
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