NAOMIはリスペクトされる存在になる NYタイムズ記者が見た 全米オープン コート外の戦い
2020年09月14日 05:30
テニス
かつてアスリートが、人種問題が絡んだ政治的発言をすることは大きなリスクがあった。1960年代、ムハマド・アリは徴兵を拒否し収監された。68年メキシコ五輪の表彰台で黒い手袋をして拳を突き上げたトミー・スミスとジョン・カーロスは、五輪から追放された。しかし、今はそうではない。多人種国家で、さまざまな異なる考え方が混在する米国でも、多くの人がなおみの行動を支持している。もし早々と負けていれば、ここまで話題にならなかっただろう。優勝してチャンピオンになったから、メッセージが脚光を浴びた。
NBAのスーパースターだったマイケル・ジョーダンは一切、政治的発言をしてこなかったことで知られる。その理由は彼にとって重要なのは何より試合に勝つことだったから。メッセージを発信するか、しないかは個々のアスリートの選択。もっともジョーダンも今の時代ならこの輪に加わったと思う。それだけインパクトが大きい。米国の社会を変え、警察機構をより良い組織に変えるきっかけになるかもしれない。
今回、なおみが黒人犠牲者の名前が入った7つのマスクをつけたことは、日本でも報道されたと聞く。スポーツの場で政治的発言をすれば、当然、批判の声もある。それでも、彼女は母親の母国である日本の人たちにもこの問題を考えてほしかったのではないか。
NBAはリーグとして、黒人差別に対する一連の抗議行動を支持するなど、時代は変わりつつある。セリーナ・ウィリアムズの後を継ぐ女子テニス界のけん引者は、今回のことで、米国スポーツ界でよりリスペクトされる存在になったと思う。 (ニューヨーク・タイムズ記者)
《「バトンは渡された」》ロイター通信は「大坂がスポーツ界最大のスポットライトを人種的平等への戦いに活用する」と報道。女子ツアー創設メンバーで男女同権の実現など社会活動に積極的だったビリー・ジーン・キングさん(76)の「バトンは渡され、ナオミは受け取った」という談話を伝えた。テニス界のレジェンドはムハマド・アリら活動家でもあったアスリートを例に「みんな立ち上がって競技や自分たちの意見、行動を通じて人々に変化をもたらした」と指摘。大坂のリーダーシップに期待した。
◇大坂が着用した7枚のマスクと犠牲者◇ ※敬称略
1回戦 ブレオナ・テーラー 【20年3月13日・ケンタッキー州ルイビル】自宅で就寝中に薬物事件の捜査でアパートに突入した白人警官に射殺される。救急救命士、当時26歳
2回戦 エライジャ・マクレーン 【19年8月24日・コロラド州デンバー】買い物から徒歩で帰宅中に不審者とみなされ拘束。首を絞められ、精神安定剤を注射され、心肺停止。数日後に死亡。23歳
3回戦 アマード・アーベリー 【20年2月23日・ジョージア州ブランズウィック】ジョギング中、白人男性にトラックで追いかけられ射殺。当時25歳
4回戦 トレイボン・マーティン 【12年2月26日・フロリダ州サンフォード】ヒスパニック系自警団に射殺される。当時17歳の高校生
準々決勝 ジョージ・フロイド 【20年5月25日・ミネソタ州ミネアポリス】白人警官に暴行され、死亡。首を地面に押しつけられ「息ができない」と訴える動画で「ブラック・ライブズ・マター」のスローガンを掲げたデモが全米に広がった。当時46歳
準決勝 フィランド・キャスティル 【16年7月7日・ミネソタ州ファルコンハイツ】車のライトが壊れていたために呼び止められ、免許証を取ろうとしたところを警官に撃たれた。私立校の食堂責任者で当時32歳
決勝 タミル・ライス 【14年11月22日・オハイオ州クリーブランド】エアガンを振り回していて警官に射殺される。手を上げるように指示されたが従わなかったために発砲された。当時12歳
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