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生殖能力を高めたいなら「骨の健康」を意識せよ。骨から出る若返りホルモン“オステオカルシン”に注目する理由

2024年09月13日 09:00

生殖能力を高めたいなら「骨の健康」を意識せよ。骨から出る若返りホルモン“オステオカルシン”に注目する理由
骨の健康が生殖能力に影響を与えるという話があります。とくに最近注目されている骨から分泌されるホルモン『オステオカルシン』…

骨の健康が生殖能力に影響を与えるという話があります。とくに最近注目されている骨から分泌されるホルモン『オステオカルシン』が、それに大きく影響しているのだとか。このオステオカルシンの働きについて、ゆりクリニック院長・「骨太な未来プロジェクト」 アドバイザーである矢吹有里先生に、くわしくお話を伺いました。

骨と生殖能力の関係性。なぜ骨が健康的だと生殖能力が高まるのか

──骨が健康だと生殖能力にもよい影響があると伺いましたが、本当でしょうか。メカニズムを教えてください。

骨形成を担う骨芽細胞によって産生されるホルモン「オステオカルシン(osteocalcin)」は、おもに骨代謝(古くなった骨を壊して新しい骨を作ること=リモデリング)に関与していることで知られていますが、近年の研究では男性生殖機能にも重要な役割を果たしていることが示されています。

このオステオカルシンは、精巣のライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を促進することが報告されています。

テストステロンは、男性の生殖能力において重要なホルモンであり、精子の形成や性欲の維持に関わっています。

骨代謝で分泌される若返りホルモン「オステオカルシン」とは

──オステオカルシンとはどのようなホルモンなのでしょうか。その働きについて教えてください。

オステオカルシンは骨代謝回転(特に骨形成)と密接な関係があります。骨の石灰化とカルシウムイオンを一定に維持させる機能があり、 骨を作ることがおもな機能と考えられています。

他にホルモンとしての作用もあり、膵臓のβ細胞に働いてインスリン分泌を促したり、脂肪細胞に働きインスリン感受性を高めるタンパク質であるアディポネクチンの分泌を促進したりするとの報告もあります。

また 筋細胞のエネルギーを高めてエネルギー利用に作用し、運動能力を高める効果があると考えられています。

急性ストレス反応が起きたときには、ストレスを受けて数分以内に骨から放出され、興奮を抑える副交感神経系の活動を抑えて体を戦闘モードにします。副腎が機能不全になると、オステオカルシンが増加し、急性ストレス反応を引き起こします。

──オステオカルシンの分泌が多いと、なぜ生殖能力にもよい影響があるのでしょうか。

先述の通り、オステオカルシンは、精巣のライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を促進することが報告されています。テストステロンは、男性の生殖能力において重要なホルモンであり、精子の形成や性欲の維持に関わっています。

オステオカルシンがテストステロンの分泌を高めることで、精子の産生と質の向上にも寄与する可能性があります。これにより、男性の生殖能力が改善されるという仮説があります。

──オステオカルシン分泌により、生殖能力向上のほか、どんなメリットが期待できるでしょうか。

オステオカルシンの働きは以下のようなものがあります。

  • 骨代謝の調整
    骨芽細胞によって分泌され、骨の石灰化や骨形成を促進させる
  • インスリン分泌の調整
    膵臓に作用し、インスリン分泌を促進して血糖値を低下させる
  • エネルギー代謝の調整
    脂肪細胞に作用し、インスリン感受性を向上させることで、エネルギー代謝を促進させる
  • テストステロンの分泌促進
    精巣のライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を促進させる
  • 男性生殖機能のサポート
    テストステロン分泌を通じて、精子の形成と質の向上に寄与する
  • 筋肉機能の向上
    骨と筋肉の相互作用を通じて、筋肉の強度や耐久性を向上させる可能性がある
  • 記憶力の向上(動物実験)
    オステオカルシンが脳に作用し、認知機能や記憶力を向上させる可能性が報告されている

オステオカルシンはどうしたら増える?活発化の方法

──オステオカルシンの分泌を増やすために、日常生活でどのようなことを意識すべきでしょうか? 運動面、食事面、生活習慣それぞれ教えてください。

オステオカルシンの分泌を促進するためには、骨に適度な負荷をかける運動や、骨代謝に必要な栄養素(ビタミンK、ビタミンD、カルシウム、マグネシウム、たんぱく質)を含む食事、日光浴やストレス管理、十分な睡眠が重要です。

とくに運動は、ウエイトトレーニング、ランニングやジャンプ運動、ウォーキングやハイキングなどが効果的です。いずれも骨や筋肉に負荷をかけ、骨の強化とオステオカルシン分泌を促進します。

栄養素では、ビタミンKがオステオカルシンの活性化に重要です。具体的には、以下などの食材です。

  • 納豆、ケール、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜
  • 味噌やチーズなどの発酵食品

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他には以下や、骨のもととなるタンパク質はしっかり摂取することが大切です。

  • カルシウム(乳製品、豆腐、骨ごと食べる小魚)
  • ビタミンD(サーモン、イワシ、卵黄、きのこ類)
  • マグネシウム(アーモンド、かぼちゃの種、全粒粉)

生活習慣では、適度な体重を維持すること、日光浴、睡眠時間の確保、ストレスコントロールなどでオステオカルシンの分泌が促されることがわかっています。

監修者プロフィール

矢吹有里(やぶき・ゆり)

ゆりクリニック 院長/「骨太な未来プロジェクト」 アドバイザー
東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入室。その後、各地の急性期病院に勤務し、東京都済生会中央病院整形外科医長を経て、2017年、東京・田町に「ゆりクリニック」を開院。骨粗しょう症予防を美容医療の視点から考える「骨美容(R)」を提唱。メディアなどでも広く啓発活動を行っている。日本専門医機構整形外科専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。日本抗加齢医学会専門医。

【骨太な未来プロジェクトとは】 見逃されがちな「骨の健康」を通じて人々の挑戦を応援するプロジェクト。長年にわたる乳の研究から得られた知見を生かし、特設サイトやメディア、イベント、学会などを通じて、骨に関する食、スポーツ、ウェルネス、子育てといったテーマで情報発信や体験の場を提供している。
https://honemirai.meg-snow.com/

<Edit:編集部>

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