【東兵庫】名門・甲陽学院4年ぶりの初戦突破 実った攻撃野球 京大志望のエースも好投

2018年07月17日 13:35

野球

【東兵庫】名門・甲陽学院4年ぶりの初戦突破 実った攻撃野球 京大志望のエースも好投
<甲陽学院・伊丹北>甲陽学院のエース吉田篤 Photo By スポニチ
 【第100回全国高校野球選手権記念東兵庫大会2回戦   甲陽学院6―1伊丹北 ( 2018年7月17日    ベイコム野球場 )】 最後の打者を三振に打ち取り、1失点で完投勝利をあげた甲陽学院のエース、吉田篤生(3年)は軽くこぶしを握った。6―1の快勝で2014年以来、4年ぶりの夏の勝利を記した。
 吉田篤は「こんなに締まった試合、初めてです」と照れたように話した。「いつも打ち合いになるんです。今日は守備もよく守ってくれて、流れが良かったと思います」

 守備陣は無失策。2回表には1点を先取された後の2死二塁で、一、二塁間を抜けそうなゴロを二塁手・浅田悠登(3年)が事前に守備位置を変えるなど好守で救った。浅田は「ベンチから一、二塁間を詰めるように指示が出ていました。(打球に)いいスタートも切れた」と振り返る。

 その浅田が3回裏、2死一、二塁で左前に同点打を放った。

 さらに5回裏先頭として、それまで苦しんでいた伊丹北投手のスライダーを中前にライナーではじき返し、猛攻の口火を切った。

 2死二塁から山本泰世(3年)が左前に勝ち越し打。以後5連打で一挙4点を奪った。

 持ち味の攻撃野球が顔を出した。この日4度あった無死一塁も一度も送りバントを使わなかった。すべて強攻策を選んだのは「普段通り」だと権浩一監督(57)は話す。

 「正直に言えば、バントの誘惑にかられたりしましたが、選手たちに“普段通りやれ”と言っているのに、自分がよそ行きではいけない」と思い直し、思い切って打たせた。

 この攻撃姿勢が選手の積極的な打撃を呼んでいる。普段の練習は放課後2時間程度。限られた時間で権監督は「今日は守備、きょうは打撃と分けて行うようにしている。放っておけば打撃ばかりやってますね」と話す。

 中高一貫校の甲陽学院で、野球部員は全員が中学時代から一緒にプレーしてきた。今の3年生10人は6年間、同じチームでやってきたことになる。中学入学時は20人ほどだった部員は高校入学時に12人。そして最後は10人が残った。

 吉田篤は「毎年5、6人かな。こんなに人数がいる年は珍しい。恵まれていると思います」と話した。

 多くの卒業生が東大、京大に進む全国でもトップクラスの進学校だ。かつては2年夏の大会が終わると勉学に専念するため、退部する部員も目立った。

 1999年秋に就任し、19年目になる権監督は「そんな時もあったかもしれません。しかし、最後までやりきってこその高校野球。それが甲陽の伝統です」と3年最後まで全うするように指導してきた。京大医学部志望のエース吉田篤も京大工学部志望の浅田も普通に野球を最後までやり通した。

 主将の林遼平(3年)は試合後、入学以来初めて聞く校歌に「涙が出てきた」と感激していた。「6年間やって来た仲間と勝利を味わえる。ずっと一緒だからチームワークがいいんです」

 かつては野球でも強豪校だった。1923(大正12)年の第9回全国中等学校優勝野球大会(今の全国高校野球選手権大会)で優勝を果たした。この全国制覇を記念して、今のストッキングにも紺の一本線が入っている。全国大会出場は春8度、夏4度。野球部は1917年創部で昨年100周年を迎えた。

 そして迎えた100回大会だった。吉田篤は「OBの方々のお話を聞くと伝統の重みを感じます」、浅田は「今のメンバーは少年野球からやってきた選手が多い。100回大会の年には勝てるぞ、と思っていました」と話した。

 権監督は「OBの方々からは“100回大会をプレッシャーに感じず、平常心でやれ”と言われてます。非常にありがたいことです」と話し、駆けつけたOBに頭を下げた。

 スタンドには誇らしく「目指せ 2度目の全国制覇」の横断幕が掲げられていた。   (内田 雅也)

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