重圧から解放 イチローが野球少年に戻る日を願う

2019年04月07日 09:00

野球

重圧から解放 イチローが野球少年に戻る日を願う
ヘンダーソン氏(左)と談笑するグリフィー氏(右) Photo By スポニチ
 10年前、ヤンキースタジアムのクラブハウスでのこと。ユニホームに着替える前、私服でズボンを腰から下げ気味に履くファッションで決めていたイチローをつかまえた「その人」は、ズボンを上げるだけでなく、そのまま相撲の「つり出し」のように持ち上げた。09年当時、イチローはとっくに大リーグで確たる地位を築き上げており、大リーグ担当1年目の記者には衝撃的だった。
 そんないたずらを仕掛けられるのは、一人しかいない。歴代7位の630本塁打を放ち、16年に殿堂入りしたケン・グリフィー氏だ。走攻守に優れたスーパースターで同じ外野手。イチローもメジャー移籍前から憧れていた存在で、「ザ・キッド」と呼ばれた明るく自由なキャラクターの持ち主でもある。09年は10年ぶりに古巣のマリナーズに復帰し、2人が初めてチームメートになった年。いじられたイチローも終始笑顔だった。

 背番号51が最後に出場した3月21日のアスレチックス戦のプレーボール数時間前。グリフィー氏は、歴代最多1406盗塁のリッキー・ヘンダーソン氏らとともに東京ドームで開催されたイベントに登場し、小学生と野球ゲームをして触れ合った。「プロを目指す子どもたちへアドバイスは?」と質問した時の答えが忘れられない。

 「われわれは野球を人生の仕事としてやってきた。子どもたちはシューズの契約もバットの契約もしていない。お金のことは関係なく、何が一番うれしいのかといえば、こうやって楽しむこと。楽しいことに集中してもらいたい」。イベントではグリフィー氏も子どもたちと一緒に楽しみ、マック鈴木氏や岡島秀樹氏らを相手に打席に立っておもちゃのバットをフルスイングしていた。

 引退会見でイチローは、オリックス時代の94年に200安打を達成後に「一気に番付を上げられ」、純粋に野球を楽しめなくなったと話した。加えて、今後の人生では「真剣に草野球を極める選手になると思う」とも。きっと、真剣に取り組むに違いないとは思う。ただ、重圧から解放され、グリフィー氏が言う「楽しいことに集中する」野球少年のような表情も見られるはずだ。(記者コラム・大林 幹雄)

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