こどもの日版【うちたまさやのついきゅう】岡田監督が失敗した切り札2人を責めなかった理由

2024年05月05日 08:00

野球

こどもの日版【うちたまさやのついきゅう】岡田監督が失敗した切り札2人を責めなかった理由
<巨・神>投手交代を告げる岡田監督(右)(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1-2巨人 ( 2024年5月4日    東京D )】 1―1同点の延長10回表の攻撃が始まったとき、タイガースのベンチで植田選手がウオームアップをしていました。足踏みや体操で体をほぐしていたのです。
 足が速く、代走の切り札です。自分の出番があると考え、準備を整えていたのです。先頭打者が出ると岡田監督から代走を告げられました。一塁に立ち、走る機会をうかがっていました。ところが投手のけん制球に飛びだしてしまい、二塁でアウトになってしまいました。せっかくの勝ち越しチャンスが消えました。

 岩崎投手はリリーフの切り札です。1―0の8回裏に登板しましたが、丸選手にタイムリーを浴び、同点を許してしまいました。開幕から13試合も0点でおさえてきていた岩崎投手が今季初めて許した失点でした。

 タイガースは代走とリリーフの切り札が失敗して試合に敗れました。それでも岡田監督は2人を責(せ)めません。いつもがんばり、頼りになること、ときには失敗することもあるとわかっているからです。こうした心のつながりを信頼(しんらい)と言います。

 選手たちも責めたりしません。7回無失点と好投していた先発の西勇投手は自分の勝利投手が消えてしまっても、ベンチの一番前から大きなかけ声を出していました。

 童話『星の王子さま』で王子さまはキツネから「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは目に見えないんだよ」と教えられます。

 野球でかんじんなチームワークも目に見えません。心で見ないといけません。それに心が表に出てくるときもあります。植田選手の準備や西勇投手の激励に、大切な心が見えた気がしました。

 ジャイアンツに連敗した試合後、岡田監督は「そんな、2つ負けることもあるよ。そんな深刻になっていたら1年間もたんよ」と話しました。

 プロ野球は毎日試合があります。野球が好きだった作家の伊集院静(いじゅういん・しずか)さんは<日々、勝者と敗者は生まれる。今日は敗れたが、明日は必ず打ち砕(くだ)いてやる>、それが<真の価値であり、希望なのである>と書いています=『逆風に立つ』(角川書店)=。

 タイガースの選手たちは「次はやりかえす」と強い気持ちでいることでしょう。希望を胸にいだいて、朝をむかえるのです。 (編集委員)

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