球音も歓声も聞こえない…誠也も汗を流した河川敷グラウンド、苦悩の後輩たち「寂しい」「悔しい」
2020年04月09日 05:30
野球
「全く見通しは立っていませんね。子供たちもストレスがたまっていると思う。本当にかわいそうな状況で…」と、同チームの会長兼事務局長を務める石墳(いしづか)成良さん(57)はため息をつく。新型コロナウイルスの感染拡大により、加盟団体である日本リトルシニア中学硬式野球協会から全チームに活動自粛が要請されたのが2月28日。期間は同29日~3月13日まで。荒川リトルシニアはその後、週末に自主練習を行っていたが、それも今では中止になった。東京都が外出自粛を要請し、学校は休校。子供たちも自宅待機を余儀なくされている。
4月。新たに中学校に入学した新1年生が15人ほどチームに加入したが「せっかく入ってくれても、まともに練習ができない。4月下旬に予定していた歓迎会も中止です」と石墳さん。チームでは専属トレーナーが考案したメニューを配布し、選手はストレッチなど自宅で体を動かしているという。地元の中学校に通う新主将の尾池剛捕手(14)は「自主練習もないので…。練習ができないのは寂しい。みんな“悔しい”と言ってます。外出もできない。早く野球がやりたいです」。自宅では素振りなどをして、練習再開の日を待ち続けている。
昨年10月の台風19号の際には江戸川が増水。グラウンドは「水没」し、外野の芝生も泥で埋まってしまった。「大きな被害が出た。芝は全部はがして奇麗になったんですが、その直後に…」と石墳さん。河川敷には多くのグラウンドがあるが、地元自治体が管理しているところは4月いっぱいは使用禁止になっているという。学校に行けず、大好きな野球もできない多くの子供たち。新型コロナウイルスの猛威は、相手を選ぶことなく日本中を覆っている。(鈴木 勝巳)
▽荒川リトルシニア 01年創設。当初は小学生も所属していたが、現在は中学生のみ。土日祝の基本練習と、月に数回(火、木曜)夜間練習を行う。主なOBは広島・鈴木誠也、BCリーグ・栃木の原田元気。鈴木誠が在籍していた09年の全国大会でベスト8。
≪リトルシニア 全550チーム活動中止≫荒川リトルシニアなどが加盟する日本リトルシニア中学硬式野球協会は、政府から緊急事態宣言が発令された7日に都内で会議を実施。協会に登録している全550チームの、5月6日までの活動中止を決めた。山下二郎事務局長(66)は「以前のようにみんなが元気はつらつと活動できるよう、しばらくは我慢するしかない」と話した。
これまで関東圏のチームは活動を中止。自主練習も取りやめていたが、緊急事態宣言によりそれが全国に及ぶ。3月下旬の全国選抜大会、5月に決勝を予定していた春季関東大会などもすでに中止が決定。中学生が所属する野球の団体は同協会以外にもあるが、山田事務局長は「どこも通常の活動をしているところはない」という。
≪活動できず野球から離れるケースも≫ 多くの小学生がプレーする軟式の学童野球の現場も、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。
全日本軟式野球連盟に登録している学童野球のチーム数は全国で1万1146(令和元年度)。選手数は約20万人以上もいるが、休校となっている学校や自治体のグラウンドを使用できず、野球ができない環境にいる子供が多いという。同連盟では、4月12日まで全国の都道府県大会を自粛するよう要請しており、期間を延長する可能性もある。
「学校が休みだと練習はできない。冬からずっと頑張ってきて活動ができないと、目標も失ってしまう」と同連盟の関係者。野球ができなければ、興味が別のことに移ってしまう可能性もある。中には釣りに行った子供が「こっちの方が面白い。野球はもういいや」となった事例もあるという。あくまで一部ではあるが、同関係者は「野球人口が減少する中で(今回の事態は)マイナスに働く」(同関係者)と話した。
≪“聖地”も使用不可≫子供たちだけでなく、草野球を楽しむ大人たちの“聖地”ともいえる場所も、現在は使用できなくなっている。東京都新宿区にある明治神宮外苑の軟式グラウンド。普段なら早朝から歓声が響いていた計6面の広大な敷地には、東京五輪に備えたサブトラックが敷かれている。当初の休業期間は19年4月1日~20年10月31日。東京五輪は1年延期となったが、今後のグラウンドの扱いはまだ決まっていないという。
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