【内田雅也の追球】バットだけでなく、守備、走塁も光った小幡竜平 大観衆の前で刻んだスターへの第一歩

2022年03月14日 08:00

野球

【内田雅也の追球】バットだけでなく、守備、走塁も光った小幡竜平 大観衆の前で刻んだスターへの第一歩
<オープン戦 神・巨> 3回1死一塁、小幡は二盗を決める(遊撃手・坂本) Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神2ー2巨人 ( 2022年3月13日    甲子園 )】 プレーボール30分ほど前、甲子園球場の外に出ると人の波ができていた。日曜午後の巨人戦だ。久しぶりの大観衆のざわめきと活気があった。
 陽気も手伝って、浮き立つ気分で外周を歩いて回った。老いも若きも楽しそうな笑顔でスタンドに向かっている。懐かしい光景だった。

 クラブハウス前で球団副社長・谷本修と球団本部長・嶌村聡に会った。人波がうれしくて見て回っているのだと伝えると「ええ、ありがたいことです」と谷本が言った。「でも、これで1万5千ほどなんです」と嶌村。「4万6千の雰囲気がどうだったのか、忘れてしまいそうです」

 確かに、コロナ禍での入場制限は3年目。公式戦は入場制限の解除が検討されている。大観衆の野球場が待ち遠しい。

 1845年、ルールを体系化したアレクサンダー・カートライトの功績の一つはファウルラインを設け、グラウンドを90度に開いた扇形にしたことだ。おかげで観客席ができた。大リーグで7回裏攻撃前に歌われる『私を野球に連れてって』は1908年にできた。「私を野球に連れてって 人ごみの中に」と歌う。野球は初めから観衆とともにあったわけだ。

 そんな観衆が沸いたシーンはいくつかあったが、書いておきたいのは阪神・小幡竜平である。3安打はもちろんだが、守備、走塁が光った。

 6回表無死一塁、秋広優人の三遊間ゴロを逆シングルでつかんだ。内野安打なのだが、歓声にはよく追いついたという驚きがこもっていた。

 さらに感じ入ったのは二盗である。中前打で出た3回裏1死一塁。巨人投手は新人右腕・赤星優志で、初めて一塁走者を背追った時だった。

 手もとのストップウオッチで投球タイムを計った。球種、タイム、結果を順に書いてみる。打者は近本光司だった。

 けん制―カッター(1秒16)ボール―直球(1秒17)ファウル―直球(1秒18)ボール―けん制―カッター(1秒19)見逃し・盗塁成功

 クイックは速く、けん制もうまい。それでも二盗を決めたスタートの勘と俊足は見事だった。

 中野拓夢が出遅れ、木浪聖也を含め3人で遊撃を争っている。かつて、藤田平が結婚式、野田征稔が故障で休んだオープン戦でチャンスをつかんだ掛布雅之の例もある。

 スターダムへの階段を上った試合だったかもしれない。 =敬称略=
 (編集委員)

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