【内田雅也の追球】ジャッジ・スローリー 梅野の不振脱出へのきっかけに、と辛抱して起用しているのだろう

2023年05月03日 08:00

野球

【内田雅也の追球】ジャッジ・スローリー 梅野の不振脱出へのきっかけに、と辛抱して起用しているのだろう
7回、二邪飛に倒れた梅野(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1-3中日 ( 2023年5月2日    甲子園 )】 大リーグには「ジャッジ・スローリー」という監督やフロントに向けた警句がある。「ゆっくり判断せよ」である。
 「野球は人生そのものだ」を座右の銘にする長嶋茂雄の著書『野球へのラブレター』(文春新書)に出てくる。<野球は失敗のスポーツで悩みのスポーツだが、常に次の試合があり、来年がある。再挑戦の機会が巡ってくる。あきらめない限り、チャンスは与えられる。人生もまた同じ>。

 選手に失敗を取り返す機会を与えながら、力量判断は時間をかけて行うべきという教えだ。指導者にはそんな忍耐力が必要というわけだ。

 阪神監督・岡田彰布は今、そんな我慢や辛抱をしている。何も口や顔に出したりはしていない。それでも伝わってくる。

 1―3で敗れた、この夜最後のシーン。9回裏2死二塁、打順が梅野隆太郎に回り、岡田は代打・糸原健斗を送った。三振で試合終了となった。

 ただ、その前の梅野の打席、7回裏1死一塁も代打はいけた。梅野は打率1割台と打撃不振であり、すでに先発投手の青柳晃洋は降板していた。糸原も渡辺諒もベンチにいた。それでも岡田は梅野を打席に送っていた。

 不振脱出へのきっかけにならないかと辛抱して起用しているのだろう。

 結果だけを書けば、これで梅野先発の試合は6連敗となった。4月18日の広島戦(甲子園)を最後に白星がない。一方で坂本誠志郎は先発した7試合全勝。捕手だけの問題ではないが、好対照を描いている。

 敗戦後、ヘッドコーチ・平田勝男に聞くと「うーん……」と言葉に詰まった。「監督の判断だけど、長いシーズンの先を見すえているんだろう。何とか立ち直ってほしいという思いでね」。だからジャッジ(判断)を下さずに待っているのだ。

 先発だった青柳は初回の3失点で敗戦投手、3連敗となった。だが2回以降は本来の投球を取り戻していた。6回までゴロアウトは実に13個を数え、フライアウトは1個だけだった。守備陣も好守連発でもり立てた。待ち望むエース復調の兆しは見えた。リードしていたのは梅野で、手応えもあったはずである。

 きょう3日はナイター明けのデーゲームだ。先発は西勇輝で、これまでは梅野と組んできたが、休ませる手もあろう。ただし、ジャッジを下すのはまだ早いとみているはずである。=敬称略=
(編集委員)

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