大商大高・高橋克典監督 プロへ3投手送り込んだ眼力と指導力 19年春の大阪大会で優勝

2023年12月12日 09:28

野球

大商大高・高橋克典監督 プロへ3投手送り込んだ眼力と指導力 19年春の大阪大会で優勝
大商大高の高橋克典監督 Photo By スポニチ
 全国屈指の高校野球激戦区にあって、2019年春の大阪大会を制したのが大商大高だ。春夏の甲子園大会出場経験こそないものの、毎年のように大阪大会の上位に食い込む実力校の一つ。この大商大高の出身者からまた一人、プロの世界へ飛び込む男がいる。今秋のドラフト会議で西武から2位指名を受けた、最速154キロ右腕の上田大河投手(22=大商大)だ。
 大商大高、大商大を経てプロの世界へ進むのは、岡田明丈投手(30=広島)、大西広樹投手(26=ヤクルト)に続いて3人目。いずれの投手も大商大高の高橋克典監督(38)の指導を受け、進学した大商大で鍛練を積み、飛躍のきっかけをつかんだ過程は同じだ。高橋監督は高校時代の3人をこう分析した。

 「圧倒的に球質が良かったのは岡田でした。プロで長く飯を食っていけそうな雰囲気があるなと感じたのは、勝ち気な性格の大西でした。上田は賢く、高校生の時からとにかく考える力がありましたね。そして、勝ち気な性格もあった。この二つがあるので(プロでも)やっていけると思っています」

 高橋監督には忘れられない試合がある。19年春の大阪大会決勝、箕面学園戦だ。2回から2番手でマウンドに上がった上田は、4回に右手甲に打球を受けた。とても投球できるような状態ではなかったが、その場で続投を志願したという。実際はそのまま降板したが、試合後に続投を望んだ理由を聞くと、こう返ってきた。「自分は背番号1をつけているので、弱い姿をみんなに絶対見せてはいけないと思いました」――。エースとしての自覚、チームを背負う覚悟。上田の成長を最も感じたシーンだった。

 上田は中学時代に目立った実績はない。おもに内野手をこなしていた。別の目的で練習を視察した高橋監督は、内野でボール回しをしていた当時の上田を見た瞬間、勧誘を決めたという。「とにかくボールの質が良かったのです。回転もすごく良かった。高校に入ったら、投手としてものになるかもしれない」。その予感は的中した。入学後は上級生に交じっても制球力は一番良く、1年夏の公式戦からたくさん経験を積ませた。もちろん、一番は上田本人の努力のたまものだが、高橋監督の眼力や洞察力、指導力も見逃せない。

 高橋監督は、大体大浪商の出身。2002年の第74回選抜大会にはマネジャーとして出場した。現役時代はおもに捕手や内野の選手だった。進学した大商大では学生コーチを務め、大学4年生だった07年11月に大商大高の監督に就任した。

 38歳という若さの割に長いキャリアを誇る指導者として、大切にしていることがある。「練習は裏切らないということ。私生活イコール、結果につながるということです。そういうことは常に伝えるようにしています。自分の出身チームの方や、お世話になった方の恩を忘れないこと。礼儀の部分も大切にしています」。技術的な指導にとどまらず、人間教育にも力を入れている。

 大商大高を経て進学した大商大では富山陽一監督(59)の下で、上田は鍛えられた。登板した7季で実に6度のリーグ優勝へ導き、通算22勝を挙げる絶対的なエースに成長。9月16日の大院大戦では無安打無得点試合を達成した。冬場に足袋を履いて投げ込み、下半身を強化するなど圧倒的な練習量でプロへの扉を開いた。上田は「目標は開幕1軍。1年目からチームの勝利に貢献できるように精一杯、頑張ります」と意気込む。高橋監督は「いずれはライオンズの勝ち頭になってほしい」とさらなる活躍を願った。

 ◇高橋 克典(たかはし・かつのり)1985年(昭60)3月6日生まれ、大阪市出身の38歳。大体大浪商では2002年の第74回選抜大会にマネジャーとして出場。現役時代はおもに捕手、内野手。大商大では学生コーチを務めた。大学4年生だった07年11月に大商大高の監督に就任。08年から教員で、商業科教諭。
  

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