八重樫東氏 ベガス初陣飾った尚弥称える「一言で言うと次元が違う」
2020年11月01日 05:30
格闘技
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尚弥はラスベガスのリングを楽しんでいるように見えました。最高だったんじゃないかな。試合後に本人は「当てにくかった」と話してたけど、見ていて攻めあぐねている感じは全然なかったですね。周囲も本人も求めるレベルが高いだけです。5回にロープを背負わされた場面とかも、尚弥だから「オッ」となるだけで、世界戦なら、ああいう場面が多々あって当然なんですから。むしろ、ダウンさせたパンチについて尚弥が「練習してきたパンチが出せた」と簡単に言えてしまうことが凄いんですよ。
中盤のKO勝利という結果は、多くの人が予想していたと思います。僕も中盤までは丁寧に戦うだろうと思っていました。予想というよりは願望ですけど。序盤KOの方がインパクトはあるけど、彼はもっと魅せるボクシングができる選手だし、今後のキャリアのこともあるので、相手に何もさせずに勝つという“王道”を行ってほしいなと。スパーリングを見ていても、そういうプランニングだろうなと感じてました。モロニーはサプライズの少ないボクサーだから、ボクシングの構築はしやすい。全部が想定の範囲で回っていくだろうと予想してました。
尚弥とは8月に引退記念のスパーリングをしました。6年ぶりだったけど、当時より全てがレベルアップしていたのは間違いありません。残念ながら、どこが?というのを引き出せるレベルに自分がなかったです。一言で言うと次元が違う。今の尚弥と手を合わせた人間はみんな、そう思わざるを得ないんじゃないですかね。
無観客試合は心配していませんでした。自分は絶対に嫌ですけど(笑い)。でも、普通にボクシングはできますよ。アーティストならステージから観客を見るかもしれないけど、ボクサーは観客が何千、何万人いようと、見ているのは対戦相手1人だけですから。アスリートなので、そこの集中力は変わらないはずです。
自分は海外に出るとか、世界で戦いたいとか思ったことはないけど、引退した今は1回ぐらいはやっても良かったかなという気持ちです。でも、それは尚弥に託します。彼が世界に羽ばたく姿を見ているのは楽しいですから。今回の勝利で尚弥に求められるものは、さらに高まるでしょう。それも彼の宿命だと思います。彼を見ていると人間の可能性の大きさを感じます。後輩たちには「尚弥さんだからじゃなく、尚弥さんがやれたのだから」と思って頑張ってほしいですね。
◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日生まれ、岩手県北上市出身の37歳。黒沢尻工高―拓大。05年3月プロデビュー。11年10月にWBA世界ミニマム級王座、13年4月にWBC世界フライ級王座、15年12月にIBF世界ライトフライ級王座を獲得し、日本人男子3人目となる3階級制覇を達成した。プロ戦績は34戦28勝(16KO)7敗。身長1メートル60の右ボクサーファイター。