辰吉丈一郎に憧れる大谷新星がMVP「影響力のある人になりたい」 プロボクシング西日本新人王決勝
2022年09月11日 17:54
格闘技
“浪速のジョー”こと元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(52)に影響されてプロボクサーへの道を歩み始めた。18歳から1年半を少年院で過ごした。塀の中で辰吉の自伝「波瀾(はらん)万丈」に出会い「辰吉さんみたいに影響力がある人になりたい」と更正を誓った。同書に記された、松下グループ(現パナソニックホールディングス)創業者で“経営の神様”と呼ばれる松下幸之助の「道」という詩もお気に入りで、そらんじられるほどだ。
小2から大阪市浪速区のボクシングジムに通っていた。中学になると「遊びにいってしまい」次第にジムから足が遠のく。高校には進学せず、生活が荒れていった。大きな転機は少年院にいる間に継父が他界したことだ。「お父さんが何人かいるのですが。ボクシングを教えてくれたのはいちばん好きだった、お父さん。亡くなった時は身寄りがなく、孤独死のような状況で、死因も分からないと聞いています」。遺品は、入所中に受け取った「早く帰ってこい」という励ましの手紙だけ。それをお守り袋に入れて持ち歩いている。
少年院を出所後まもなくプロボクサーになるため、昨年4月に真正ジムへ入門した。「立派なジムだし、名前が“しんせい”で自分の名前(新星)と一緒。それに山下会長は元警察官。しっかりした会長のもとでやりたいと思った」。現在の主な収入であるゴミ収集の仕事は早朝から昼過ぎまで。その後の時間はロードワークやジムワークとボクシングのために費やしている。
穏やかな口調で、これまでの歩みを振り返り「少年院は入ったらアカンところですけど、今は入って良かったと思う」と実感を込めた。大きな夢がある。「世界チャンピオンになりたい。その前に全日本新人王を獲りたい。(全日本決勝を含め)残りの試合を全部KOで」。浪速のジョーに匹敵する“影響力のある人”を目指し、ボクシングに精進する。