猪木さん、スポーツを通じた国際平和 独自外交で切り開いた道
2022年10月04日 04:20
格闘技
「猪木さんはとにかく相手の懐に飛び込むのが上手な人でした。この時、2人が会ったのは2度目。ここまで和気あいあいとできるのかと驚きました」
2人の初対面は、猪木さんが参院選に初当選した89年の暮れ。ソ連に行く前にキューバに寄った時だ。そこで8歳で急死した娘のことなど、身の上話までしたことで意気投合し、翌年の食事会につながったという。
「実は食事の前に2人で1時間ぐらいお茶もしていたんです。大使が通訳をしていましたが、猪木さんは(公用語の)スペイン語を聞き取れるので会話のテンポが良い。ボクシングのことやカリブ海の沈没船の引き揚げ計画などいろんな話をしていました」
90年12月にはイラクで人質となった日本人の解放に尽力した。
「猪木さんは交渉相手に“人質を返せ”とは言わず、人質の奥さんをイラクに連れていった。“奥さんを連れていけば一緒に帰国させてくれるだろう”と。狙い通りになったことに奥さんたちが喜んで、解放された旦那さんたちより前に出られて猪木さんと“ダァーッ”をやったんです」
◇原 悦生(はら・えっせい)1955年(昭30)12月9日生まれ、茨城県出身の66歳。高校1年の時から猪木さんを追って写真を撮り続け、早大卒業後、80年にスポニチに入社。86年に退社しフリーに。今年3月、写真本「猪木」を出版した。