井上拓真を撃破! 堤聖也が12年越しリベンジで悲願の世界王者に 「井上選手は僕の人生の恩人」
2024年10月13日 21:28
格闘技
宿敵・井上拓真について「彼がいたから僕はプロボクシングの世界に来たと思うし、彼がいたおかげで僕はボクシングを続けて強くなって、こういう舞台に立つことができました。井上拓真選手は僕の人生の恩人であります。本当に今日戦えたことうれしく思います。ありがとうございます」と頭を下げた。
12年ぶりに対戦した井上拓真は「すごくうまくて、練習してきた動きがなかなか出なくてどうしようかなと。やっぱりうまいな。ハードル上げて臨んでもやっぱりうまいな。やっぱり俺はこういうところでコケる男なのかなと何回も弱いところが出てきてたけど、石原トレーナー、(鈴木)眞吾会長、みんなが声をかけてくれて、その言葉のおかげで火をともすことができて、大事に1ラウンド1ラウンド戦うことができました」。
「まだ(世界王者の)実感がわかない。中学生の時に内山高志さんのベルトを持たせてもらったことがあって。それ以来、自分のベルトを巻くまで世界のベルトは触れないという誓いを立てていたので。きょうやっと自分のベルトを触ることができてうれしいです」とベルトを腰に巻いて喜びをかみしめた。
「僕は95年組の中でも劣等感強く育ってきたから、特に95年組トップ、井上拓真に勝ってチャンピオンのベルトを獲れたこと、凄く価値があることだと思います。本当にうれしく思います。そして今日まで支えてくれた人たちに感謝します。ありがとうございます」。
「石原トレーナー、眞吾会長の指示をとにかく忠実に守って、攻めろ攻めろ、前に出ろ、細かい指示も全部しっかりその通りに遂行したこと、それが勝因だと思います。あとはやっぱり、あきらめない心じゃないですか」。
最後にマイクを握り、「本物をぶっ倒した、極上のバッタモン、堤聖也です!」と絶叫。「明日、バンタム級の選手が2試合あります。1つは僕よりも全然評価の高い凄く強いチャンピオン(中谷潤人)、そしてもう1人は僕の次に世界ランキングが高い日本人選手(那須川天心)です。僕自身、楽しみにしています。明日も凄い面白い興行になると思います。楽しんでいってください。本当に今日はみなさんありがとうございました」とファンにメッセージを送った。
挑戦者の堤は序盤から前に出続けて果敢に打ち合いを挑んだ。中盤からは持ち味のパワーと手数で王者を圧倒した。
10回にはバランスを崩した王者の顔面を左でとらえ、ダウンを奪った。
11回には左目まぶたからの出血でドクターのチェックを受ける場面もあったが、最後までスタミナは落ちず、力強いパンチを打ち続けたことが3-0での判定勝ちにつながった。
堤聖也のボクサーとしての立ち位置はどこなのか。優勝とは縁遠かった競技生活の答えを出すべく臨んだ、井上拓真との再戦だった。拓真、田中恒成、ユーリ阿久井政悟、アマの坪井智也ら世界王者がそろう1995年度生まれ。アマでは一度も日本一を果たせず、常に劣等感を抱いていた。九州学院高2年時のインターハイ・ライトフライ級では初戦で阿久井を下したが、準決勝で拓真に判定負け。だが、田中とともに当時の全国トップ2だった拓真と2ラウンドまでは互角に戦い、地元紙の取材に「絶対にリベンジしたい」と誓った。
当初は大学で競技をやめるつもりだったが、拓真らのプロでの活躍が刺激となり考えを変えた。「プロをやらずに、酒飲んで居酒屋でテレビ見ながら“俺、こいつとやってんだよ”みたいな大人になりたくなかった。自分がどこまで行けるか、ちゃんとやりたかった」。拓真戦での手応えが「ずっと胸にしこりみたいに残っていた」ことも、大きな要因となった。
プロでも2試合連続の引き分けやコロナ禍による1年8カ月のブランクと、決して順調ではなかった。年間最高試合に選ばれた昨年12月の日本王座4度目の防衛戦では挑戦者の穴口一輝さんが試合後に意識を失い、亡くなる悲劇も起きた。拓真に挑んだのは、その穴口さんが最後に戦った有明アリーナの青コーナーから。「いつも覚悟を持ってリングに上がっている。人生の潰し合いと思ってボクシングをやっているから、彼に限らず、これまで戦ってきた人たちへの思いはある」。相手の人生をも背負って殴り合う競技に誇りを持ってきた男が、自分の価値を証明するために上がったリングだった。
◇堤 聖也(つつみ・せいや)1995年(平7)12月24日生まれ、熊本市出身の28歳。中学から地元の本田フィットネスジムでボクシングを始める。九州学院高―平成国際大。アマ通算84勝(40KO)17敗。ワタナベジムから18年3月にプロデビューし、19年9月に角海老宝石ジムへ移籍。22年6月、日本バンタム級王座を獲得して4度目の防衛に成功した。身長1メートル66、リーチ1メートル64。左右スイッチのボクサーファイター。
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