谷口キヨコ 阪急電車にサンダーバード…鉄道好きなのは「あの頃」「あの場所」につながってるから
2024年03月19日 18:00
芸能
私は、鉄ちゃんと呼ばれるほど詳しくないし、鉄ちゃんと呼ばれる方々をちょっとリスペクトする側なんです。「あんなに愛せてええなぁ」みたいな…。つまり、私は鉄ちゃんほど鉄道に集中してないんですね。鉄道の他にもそれと同じぐらい好きなものがいろいろとあるから。でも鉄道好きなんです。
で、なんで私は「なんとなく」でも「鉄道が好き」なのかな、と。私は阪急沿線に生まれ育ったので電車自体すごく身近で、線路の見える家には15年住んでいました。だからあのあずき色…マルーンカラーの車体は生活の一部で好きも嫌いもなく「当然そこにあるもの」でした。
子供の頃は、帰宅して晩ご飯どきに親と話をしたあとは、一人っ子なので完全に一人の世界…。学校や塾で何かあったときのモヤモヤはあまり親には言いませんでした。でもモヤモヤしてる…。そんなときにはベランダに出て、時々通る電車を眺めながら電車に話しかけてみる。そんなことを繰り返していたように思います。なので、電車は私が一方的に話しかける友達みたいな感じ。その後、実際に乗るときには、座りながら「こないだのあれさ…」みたいに心の中でまた電車に話しかけてました。
大人になって阪急沿線から離れて、たまにマルーンカラーに出会う(乗る)と、地元の友達に会ったような懐かしくてたまらない気持ちになります。
そんな私が今、お気に入りなのは特急サンダーバードです。冬に雪の帽子をかぶってホームに入ってくる姿はいとおしく「お疲れさまです、寒かったね」と思わず声をかけてしまいます(なるべく心の中で)。
北陸新幹線の金沢→敦賀延伸で、ついに福井県にも新幹線が!ってな感じでめちゃ盛り上がってますよね。でも、大阪から金沢や七尾まで運行していたサンダーバードは大阪から敦賀までになり、長距離を走る特急ではなくなりました。
特急電車は日本国内であっても文化の違うところに連れていってくれて、その違った文化圏に行くことが国内旅行の醍醐味(だいごみ)だとも思います。非日常だから新鮮でリフレッシュできる、それが旅。また旅ではなく、就職や進学で北陸から関西へ生活自体を移動している方もたくさんいらっしゃいます。そんな人たちにとってサンダーバードは、故郷と自分をつなぐよりどころではなかったでしょうか。北陸新幹線が加わったことで、今のサンダーバードはその役目を終えたのかもしれません。
私が電車を好きなのは、私にとって自分の故郷や、そこにあった「あの頃の自分」やその風景に出会わせてくれるものだからではないかと思います。一本の線路が懐かしく、いとおしい何かにつながっている。だから、どの電車を見ても、それが「誰かの」いとおしい場所につながっていると思えてくるのです。