自分で作れる認知症の予防薬=筋トレ 筋力の差が発症リスクに影響 日常生活の中で鍛えよう
2024年05月10日 05:00
芸能
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森谷先生、なんでも歩幅と認知症に関係があるそうですね。
「東京都健康長寿医療センターの研究チームが2000年代初めに、新潟県と群馬県の70歳以上1149人の認知機能を検査し、その後の追跡調査で、足腰が弱くなり歩幅が狭い人ほど認知症になっていたという結果が出ています。歩幅が広い人を1とした場合、狭い人の認知症リスクは3・39倍でした。女性だけを見れば5・76倍でした」
なぜ歩幅が広いと認知症のリスクが少なくなるんでしょうか?
「歩幅は体格差がありますから、普段歩いているより大股で歩くことがポイントになります。大股で歩くには推進力が必要です。推進力を得るには筋肉が必要。大股で歩ける人は、筋肉があるということ。筋肉を付けることが、認知症の予防につながるのです」
ウオーキングで筋肉を付ければいいわけですね。
「いつも同じ速度で歩いていては、筋肉は付きません。負荷がかからないからです。認知症の予防には、少しきついなと感じる運動をする必要があります。3分間普段通り歩いたら、1分間は速足、また3分普通に歩いて、1分間速足、という具合です。途中、階段を上ったり、スクワットをしたりすれば一層効果的です」
筋肉に負荷をかけることがカギなんですね。
「きつめの運動をすると、筋肉からアイリシンという物質が放出されます。このアイリシンが脳の中で記憶をつかさどる部位、海馬に到達すると、脳細胞を活性化する脳由来神経栄養因子・BDNFという物質を生み出します。このBDNFが認知症の原因物質と言われるアミロイドβを無毒化することが、米国の研究で分かっています」
そういう仕組みなんですか。
BDNFを出すために、ジムでガンガン運動すればいいのでしょうか。
「必ずしもそうではありません。全身の筋肉の6割は下半身にありますから、この筋肉に負荷をかければ効果的です。下半身の筋肉が“少しきつい”と感じる運動を、日常生活の中に取り入れましょう。ウオーキングなら、先ほどお話しした“インターバル歩行”。デスクワークが多いサラリーマンには“同じフロアのトイレに行かない”ことをお勧めします。1階でも2階でも、上の階のトイレに行く。もちろん階段を使うこと」
2フロア分、階段で上がるだけでも、結構きつく感じますもんね。
「階段を見たら、頭を下げて感謝するぐらいの気持ちで。無料のジムですから。駅でも、商業施設でも階段を使ってBDNFを出しましょう。通勤電車の中では、つり革につかまって、かかとを上げ下げするのもお勧めです。帰宅してテレビを見ているときには、膝にクッションを挟んで、ギュッと力を入れてみてください。結構な筋トレになります。そのまま両脚を持ち上げれば腹筋運動にもなります」
いつでもどこでも、筋肉に負荷をかける運動はできるわけですね。
「自分でルーティン化することが大事。生活習慣にすることです。生活習慣にできないから、メタボ、糖尿病など生活習慣病になると考えてください。筋肉は勝手に動くわけではありません。脳が運動野に電気を流して、筋肉は動きます。筋肉が動くことは、脳が動くということ。筋トレ=脳トレ、と言ってもいいのです。昨年12月、アルツハイマー病の新薬が承認されました。その高価な薬を飲まなくても、筋肉に負荷をかけることで“認知症の予防薬”は自分で作れるわけです」
森谷先生は「今の体形には自身の過去10年の生活習慣が表れている」ともおっしゃっていました。ポッコリおなかを見て、ちょっと反省。我々シニアにとって、運動は体力維持のためだけでなく、ボケないためでもあるのです。無理は禁物ですが、階段があったら上るようにしましょうよ!
◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の73歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。健康に関する名物コーナーに登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。75歳の現役医師・鎌田實さんとの共著「70歳からの『貯筋』習慣」(青春出版社)が販売中。