【G1ドキュメント=美浦・21日】馬場開門の午前6時前、尾関師は美浦トレセンの馬場を一人で歩いた。Wコースとダートコース。どちらがレッドファルクスの最終追い切りに適しているのか。「ダートは雨で少し硬そうだ」。師自らの足に直接伝わる感触を踏まえてWコースでの追い切りを決めた。5歳時から3年連続のG1制覇を可能にするのは、不老長寿の泉に漬かったようなみずみずしい馬体。若さを保つ秘けつはコース選びにも手間を惜しまない厩舎のこまやかなケアにあるのだろう。
馬場開門の1時間半後、その若々しい芦毛がWコースで躍った。調教駆けするダノンアイリス(5歳1000万)の4馬身後方から差を詰めると、外から頭差かわしてゴール。「先週は心肺機能を高めるため長めの追い切り(長めに助走距離を取った追い切り)でしたが、今週はある程度、競馬に直結する追い切りをしたかった」。のみ込みの悪い長老・梅崎らに理論派調教師らしい説明を加えた尾関師。「先行馬が最初からしっかり前に行ってくれて、内容のある稽古ができた。名古屋に行くと馬が元気になると思えるほど得意なコース。あとはこの馬のことをよく分かってくれているジョッキー(M・デムーロ)に全権委任です」。普段のクールな表情を崩して、終始笑顔の会見。よほど自信があるのだろう。
ロードカナロアに並ぶJRAスプリントG1最多の3勝目へ。「昨年はJRA賞最優秀短距離馬に選んでいただきましたが、そのタイトルに負けない走りを」と、揺るぎない手応えを明かした。