広島ベンチに工藤さんの「背番号9」ユニホーム 急逝の元チームメートとともに戦いルヴァン杯劇的初V
2022年10月23日 05:30
サッカー
後半51分、VAR判定で得たPKを途中出場のソティリウが決めて追いついた。そして目安のアディショナルタイム9分が過ぎた56分。右CKを再びソティリウが右足で合わせた。「ただ、ただ…これを目指して戦ってきた。最高です。うれし涙で崩れてしまいました」。自らのパスミスで失点に絡んだ主将のDF佐々木は、安堵(あんど)していた。
精神的に難しい一戦だった。前日21日、17年シーズンから2年間在籍した工藤壮人さんが32歳の若さで逝去。多くの選手が訃報を知ったのは、試合当日の朝だったという。観客席には「工藤壮人の魂は永遠に俺達と共に」との横断幕も掲げられた。この日のメンバー18人中11人は一緒にプレーした経験がある。佐々木が「感情の整理が難しかった」と言えば、MF青山も「どう表現したらいいのか分からない」と口を閉ざした。試合前にささげた黙とうでも、涙があふれるのを抑えきれなかった。
だが、ベンチ脇に飾った工藤さんの背番号9のユニホームに誓った。「健康でサッカーができること。当たり前だけど当たり前じゃない境遇に感謝して、彼の分までプレーしよう。失礼なプレーは見せない。できる精いっぱいのプレーをしよう」(佐々木)――。最後の1秒まで諦めず走り抜いた結果が、奇跡につながった。
佐々木は「彼の力をもらえました」と振り返り、青山も「一緒に戦ってくれていたのは間違いないです」と言葉に力を込めた。J2甲府にPK戦で敗れた天皇杯決勝のショックも払拭。工藤さんに最高の報告を届けた。(飯間 健)
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