【蹴トピ】中村憲剛さんは夢を着て…12・14引退試合 ミスターフロンターレは絆とともに

2024年10月16日 06:00

サッカー

【蹴トピ】中村憲剛さんは夢を着て…12・14引退試合 ミスターフロンターレは絆とともに
高校2年時のサッカー教室で中村憲剛さん(中央)と記念撮影をする菅野さん(右) Photo By 提供写真
 川崎F一筋で18年活躍し、20年シーズン限りで現役を退いた元日本代表MF中村憲剛さん(43)が“絆のユニホーム”でラストマッチに臨む。12月14日の開催が決まった引退試合(U等々力)で、岩手県陸前高田市出身の菅野朔太郎さん(25)がデザインしたシャツを採用。東日本大震災があった11年から交流を重ねてきた元サッカー少年の夢を後押しする。(東 信人)
 菅野さんがデザインしたユニホームは現役を含めた新旧川崎F選手による「KAWASAKIフレンズ」が2チームに分かれて対戦する引退試合の後半で使用される。試合前日を含めてイベント盛りだくさんの2日間を締めくくる文字通りラスト45分の重要なアイテム。中村さんは「自分にとって最後。それを(菅野)朔太郎が一番最初にデザインするユニホームにしてほしかった」と訴える。

 「非常に光栄に思いました。クラブのユニホームは毎年変わりますが、引退試合は一生(次は)出てこないので」と菅野さん。ブルーとホワイトの2種類を製作し、いずれも手書きのイラストを下地に配した。中村さんが「僕らの関係がちゃんと詰まっていた。凄くいいなと思った」と出来栄えを称えたデザインには東日本大震災からの復興のシンボルになっている一本松や陸前高田市と川崎市の白地図、ミスターフロンターレの雄姿などがちりばめられている。

 「多くの夢を与えられてきたみんなの憲剛さんへの感謝の気持ちが集結するイメージ。陸前高田のサポーターも含めて」とコンセプトを語る菅野さん。引退ユニホームに結実した2人の出会いは13年前にまでさかのぼる。

 11年9月に川崎Fが被災地支援で現地を訪問。会場になったのが当時6年生のサッカー少年だった菅野さんの小学校だ。「テレビで見ていた憲剛さんが来てくれた。ヒーローというかスターという感じで」。津波で自宅が流されて避難生活を強いられていた中、一緒にボールを蹴ってバーベキューも楽しんだ。

 そこまでなら、ただの思い出で終わったかもしれない。しかし、一過性に終わった活動もあった中で川崎Fは「支援はブームじゃない」を合言葉に継続。15年にはクラブと陸前高田市が友好協定「高田フロンターレスマイルシップ」を結んで選手の現地訪問や逆に市民を招く「かわさき修学旅行」など交流を重ねた。菅野さんも可能な限り年に1度のサッカー教室に参加。いつの間にか応援する対象が他のチームから川崎Fに替わったという。

 そんな菅野さんが震災後から趣味として始めたのがユニホームのデザイン。「A5サイズのノートに描きためて。何百ぐらい描いたかな」。高校卒業後に上京して多摩美大でデザインを学習。「実現するには学ぶ必要があると思った」という。

 在学中はクラブ公式グッズショップでアルバイト。卒業まで働き続けた中で川崎Fとの関係は深まった。中村さんとも再会を果たして3月11日にクラブが行う街頭募金では一緒に活動。20年12月に行われたレジェンドの引退セレモニーでは陸前高田代表として登壇して感謝の言葉を口にした。「将来フロンターレのユニホームをデザインできれば」という菅野さんの夢を知った中村さんも「実現できたらいいね」と激励。美大卒業後も気に掛けてきたことが今回のオファーにつながった。

 菅野さんは5月からアパレルメーカーで営業をしながら商品開発にも携わっている。壁紙デザインからの転職で「いろんな職種とか経験を経て最終的にユニホームをできるようになれば」と意欲。中村さんは「自分のデザインしたものをフロンターレのOBが着て等々力でプレーするという幸せを感じてモチベーションに変えてほしい。夢はここから始まるので」と話す。いつの日か憲剛監督の下で成長した朔太郎少年がデザインを担当。そんな夢の続きがあるかもしれない。

 ≪前半は“ケンゴダム”ユニ≫
 中村さんの日本代表時代の仲間「JAPANフレンズ」が登場する引退試合前半でも特製ユニホームが用意される。親交が深い漫画家・原泰久さんが代表作にちなんで原画を提供。「漫画キングダムの春秋戦国時代にもし中村憲剛が武将として存在したとしたら」というコンセプトでイラストを描き下ろした。

 甲冑(かっちゅう)の胸の部分や肩当て、腿当てに日本代表のエンブレムである八咫烏(やたがらす)をモチーフにした文様をデザイン。「一撃必殺」と名付けられた細身の剣はキラーパスからイメージした。「曲線的なプレーのイメージも強いので」と剣の鞘(さや)に蛇の文様を入れるなど中村さんに対する思い入れや原さんなりのこだわりが詰まったものになっている。

 原さんが「本当にお疲れさまでした!!たくさんの感動をありがとう!!」とメッセージを添えた貴重な原画を生かした完成品は「ケンゴダム・ユニホーム」と名付けられ、中村さんは「震えますね。光栄極まりない。うれし過ぎて」と感激。菅野さんデザインのシャツとともに引退試合を盛り上げることになる。

 ≪小学生時代の先輩、澤穂希さんらと対決≫
 引退試合としては異例のエキシビションマッチも行われる。中村さんが小学生時代に在籍した府ロクSCの2年先輩に当たる澤穂希さんら11年女子W杯優勝メンバーを中心とした「なでしこフレンズ」が登場。中村さんと縁がある著名人による「ケンゴフレンズ」と対戦する。澤さんは試合に向け「憲剛との出会いは小学生の時。線は細いけど、負けず嫌いで頑張り屋の印象が強く、プロになってもセンス抜群で多くの人を魅了している姿は見習うところがたくさんあり、尊敬していました」とコメント。中村さんは「憧れて活躍を見ていた。本当にありがたい」と出場快諾に感謝している。

 ≪後半25分からガチプレーも≫
 異例ずくめのイベントでは試合前日の12月13日に本番会場のU等々力で前夜祭が行われる。「KAWASAKIフレンズ」の公開練習に追加企画も用意。引退試合では後半25分から「中村憲剛のガチプレーTIME」が設定される。中村さんは「自分がやってきたことを存分に出せるような時間を設定させていただいた。自分への挑戦」と川崎Fの現役選手も出場する中、現役時代をほうふつさせる本気モードのプレーで場内を沸かせる意気込み。また、試合前には寿司チェーン「すしざんまい」を運営する喜代村の協力で200キロ級マグロの解体ショー、にぎり寿司を販売する「けんござんまい」が展開されるなどピッチ内外でどこまでも異例のイベントとなりそうだ。

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