どうなる家族のあり方 医師、弁護士、公認心理師、親の離婚経験者が語る「共同親権」

2024年02月26日 06:30

社会

 政府は、離婚後の共同親権を導入する民法などの改正案を3月上旬にも国会に提出する。施行は公布から2年以内で、今国会で成立すれば2026年までに共同親権が始まる見通しだ。導入されれば、父母が協議して親権のあり方を決め、折り合えなければ家裁が判断することになる。家裁の判断では、虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)の恐れがあるなど「子の利益を害する」場合、父母どちらかの単独親権とする。
 国会では共同親権を支持する意見もあるが、慎重論も広がっており激しい議論が予想される。家族に関わる家族法制が大きな転換点を迎えようとしている中、立場や環境によって賛否も受け止め方も様々だ。スポニチでは立場の異なる4人に話を聞いた。

 《現状の矛盾を解決する策》

 不登校診療に力を入れる「出雲いいじまクリニック」(出雲市)の飯島慶郎院長は「離婚した場合、親権を持った親が、子供に対し相手方を悪く言うことがある。子供が両親に愛着を持っていたとしたら、それは離別と負の感情という二重のダメージになる」と語る。飯島氏が離婚の相談を受けた際は、決断の前に別居することを提案している。「離れて暮らすことで夫婦間の争いが減り、前向きな関係になるケースが多い。子供にとっても、両親に会いたい時に会える自由が保障されることで精神が安定する傾向がある」とした。

 単独親権制度の現状では「親権を失った親は、子を取られた上にお金も取られると感じがち」とし、争いが増えると指摘。「現在の色んな矛盾が解決に向かうなら共同親権を導入した方がいい」との立場を示した。

 《家裁の体制強化が急務》

 離婚問題に詳しい弁護士法人・響の古藤由佳弁護士は共同親権の導入について「正直、不安が大きいという印象を受ける」と語る。

 導入された場合、夫婦が協議して合意すれば選択できる方向だ。一方、協議が不調に終われば、家裁が判断する。古藤氏は「今でも家裁が扱う離婚事件は多く、しかも長期化する傾向が強い。今度はその手続きがさらに増えることになる」と懸念。家裁の体制強化を急ぐ必要があるとし「協議する場を設けるのは大切なことだが、結論を待つ間に子供はどんどん大きくなっていく。果たしてそれが本当に子の福祉にかなうのか不安を覚える」と疑問を呈した。

 《子供が会える環境が大事》

 公認心理師で大阪カウンセリングセンターBellflowerの町田奈穂代表は共同親権の導入に賛成の立場だ。単独親権しか選択肢がない現状について「子供が、離れて暮らす片方の親に会いたいと思っても会いづらい状況」と指摘。これは国連の「子どもの権利条約」が定めた子供の権利を侵害しているとした上で「心身の発育にもよくありません。私が見てきた中でも、自分の感情を押し込み、うつや不安症、不登校といったことに苦しむ子たちがいます」と明かした。また、「親権を取られるんじゃないか」などと離婚を踏みとどまることで心理的な苦痛を抱えながら生活している親も多いという。

 共同親権の導入は解決策の一つとし「子供が会いたい時に両親に会える環境を整え、親は離婚しても自分らしく生きられるような社会になることが望ましい」と訴えた。

 《離れた親を披露宴に呼ぶべきか》都内の女性会社員(24)は高3の時に両親が離婚。親権者については15歳以上は自分で申立てできるため、姉と話し合って父を選んだ。理由については「両親の不和のきっかけは母の不倫です。私も証拠を見てしまった」という。

 今も母とは定期的に会っているが、将来への不安がちらついてきた。結婚を意識する年頃になり、そういった相手もいる。「披露宴に母を招待したいというのが本音ですが、父は“親権者は自分だけ”と拒むと思います」と苦悩を明かす。「親なのに法律上は親じゃないというのが苦しい。色々調べてみても正解が分からず、最近は披露宴をする気がなくなってきた」と苦笑いし「共同親権を選べるなら選びたかった」と語った。

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