【東京マラソン】ウクライナから参加の義足ランナーも完走「母国と負傷した仲間のために走る」

2024年03月04日 05:25

社会

【東京マラソン】ウクライナから参加の義足ランナーも完走「母国と負傷した仲間のために走る」
完走したロマン・カシュプルさん(撮影・大城 有生希) Photo By スポニチ
 地雷などで足を失ったウクライナの負傷兵2人が3日、義足で東京マラソンに出場した。目標は同じように戦地で負傷した仲間の医療費を集めること。ロシアによるウクライナへの全面侵攻から2年。「日本の方々に改めてウクライナの現状を認識してほしい」と願いを込めた。
 右足に義足を付けて参加したロマン・カシュプルさん(27)は「母国と負傷した仲間のために走る」と強い思いを胸に臨んだ。19歳から戦闘に参加。22歳で地雷を踏み、右足を失った。「そうなるものだと思って戦地にいたので、ショックは大きくなかった」と当時を振り返る。手術やリハビリ生活を経て、義足の訓練を始めると、ロシアの全面侵攻が始まった22年には義足で前線に立った。

 そんな中で「世界にこの現状をより知ってほしい」と思っていたときにウクライナの慈善団体「CITIZEN」に出会い、マラソンを通して世界へ発信することを決めた。

 昨年から「ワールドマラソンメジャーズ」の称号を持つ6つの大会への参加を目指している。ニューヨークシティマラソン、ロンドンマラソン、そして迎えたのが今回の東京マラソンだ。「6大マラソンを走り、ウクライナのことを知ってもらうのがモチベーションになっている。改めて日本の方々にも認識してほしい」と強い覚悟で来日した。

 もう1人の義足ランナーはユーリ・コズロフスキーさん(41)。8年前の偵察任務中に地雷を踏み、左足を失ただけでなく、右足にも重傷を負った。カシュプルさんとは負傷兵が集まるスポーツ大会で出会い、一緒にマラソンに出場することになった。初マラソン挑戦に「新しい挑戦をしてみたかった。8年間義足を付けた自分が走ることで、同じような境遇の人のモチベーションになりたい」と強い決心で臨んだ。

 この日の沿道には、2人のことを知って応援に来た日本人の姿も多く見られた。カシュプルさんは「予想よりも多くの方が応援に来てくれていた。ウクライナ語で応援もしてくれて本当にうれしかった」と語った。

 東京の名所を見ながら走る42・195キロ。カシュプルさんは、浅草寺を通過する際に「戦争が終わり、ウクライナに平和が訪れるように」と願ったという。結果は、コズロフスキーさんは29キロ地点でリタイア。カシュプルさんはこれまで5時間台だった自己ベストを大幅に更新する4時間50分2秒をマークした。

 ウクライナでは、2人のように戦闘で手足を失った兵士の数がおよそ5万人に上る伝えられている。同国政府は負傷兵が義足などを購入する費用を補助するとしているが、軍事侵攻の長期化で対象者は増える一方だ。2人が東京の街を駆け抜けた義足は、日本円で平均150万円。海外からの支援が不可欠なのが現状だ。

 カシュプルさんは「ウクライナの戦いは母国のためであり、世界のためだ。日本の方々にも少しでもサポートしてほしい」と呼びかけた。

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