打ち上げ5秒後に…小型ロケット「カイロス」1号機爆発 “6度目の正直”21億円が失われる形に

2024年03月14日 05:30

社会

 宇宙事業会社スペースワン(東京)は13日午前11時過ぎ、和歌山県串本町の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」から小型ロケット「カイロス」1号機を打ち上げたが、直後に爆発した。搭載していた衛星の軌道投入ができず、打ち上げは失敗した。同社はロケットに搭載したコンピューター自体の判断による自律破壊を行ったと発表した。現状で人的被害はないとしている。
 発射場近くに設けられた見学場には発射を待ちわびる人たちが続々と集まったが、打ち上げから約5秒後、機体は上空で激しく爆発。白煙を上げ、破片とみられる物体が周辺に飛び散った。周辺の山林からはオレンジ色の炎も上がり、会場内からは悲鳴が漏れた。

 今回の打ち上げは民間が所有する発射場から日本初の試み。政府の小型衛星を搭載しており、軌道投入に成功すれば民間単独ではこちらも国内初だった。打ち上げは5度延期されており“6度目の正直”はならず。費用は開発に約11億円、打ち上げに約10億円とされ、5秒で計約21億円が失われた形となった。

 カイロスは全長18メートル、重さ23トンの小型の固体燃料ロケット。従来に比べて低コスト、高頻度で衛星を宇宙に送り届ける「宇宙宅配便」事業を目指す。

 ロケットによる衛星の打ち上げ需要は世界的に拡大。世界では民間企業が躍進し、競争が激化している。スペースワンが打ち上げに成功すれば、日本でも民間参入が加速すると期待されたが、ハードルの高さを示す格好になった。

 ただ、今回で挑戦が終わったわけではない。初号機は霧散したものの、契約は3号機まで成立している。打ち上げ失敗後の会見で、原因や発射計画に関して問われた豊田正和社長らは「調査中」と繰り返した一方「我々は失敗という言葉は使わない。新しいデータ、経験があり、それは新しい挑戦の糧になる」と前を向いた。

 民間による宇宙開発をリードする「スペースX」(米国)の創業者イーロン・マスク氏も過去に何度も打ち上げに失敗。この日、カイロスの爆発を受け、SNSに「ロケット開発は難しいものだ」と投稿した。

 カイロスは2030年代に年間30回の打ち上げが目標。豊田社長は「この計画を変えるつもりはない」と強調。識者は「どこまで原因を究明できるか。再挑戦までのスピード感が鍵」と分析した。

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