岸田降ろし加速 キーマンは菅前首相 衆院補選で自民“全敗” 「別格の保守王国」で瞬殺された
2024年04月29日 04:40
社会
細田博之前衆院議長の死去に伴う補選で、自民新人の元中国財務局長、錦織功政氏(55)=公明推薦=と、立民元職の亀井亜紀子氏(58)の一騎打ち。細田氏は裏金事件の震源地である清和政策研究会(現安倍派)の元会長。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係も指摘され、陣営は弔い選挙ながら細田後継色を薄めた選挙戦を展開。業界関係議員を大量動員し、支持組織の引き締めを強化した。首相は陣営が「逆効果」と懸念する中で2度も応援に入ったが、自民支持層の票を亀井氏に取り込まれた。
総選挙を経ない秋の総裁選は「選挙の顔選び」となり、内閣支持率の超低空飛行にあえぐ首相の再選はおぼつかない。唯一の延命策とされる6月の国会会期末解散を見据えるが、全敗を受け、解散権封印圧力が強まりそうだ。
政府関係者は「菅義偉前首相の悪夢が現実味を帯びてきた」と指摘。2021年4月のトリプル補選・再選挙で全敗。お膝元の横浜で8月に行われた市長選でも支援候補が落選。総裁選を前に退陣表明に追い込まれた。
菅氏が再選になお意欲を見せていた段階で、いち早く手を挙げたのが首相。退陣の流れを加速させた。自民党関係者は「菅氏は岸田降ろしで引導を渡すキーマン。3年前と真逆の状況で、非主流派に追いやられた意趣返しにも映る」と話した。
一方、サンドバッグ状態ながら「戦闘モード」(政府関係者)と評される首相。支持率微増を受けた会期末解散を強行するとの見方は消えない。多くの議員がバッジを失う恐れがあり、党内では警戒感が高まっている。「解散しないままの総裁選出馬も十分考えられる」(同)という。
自民党関係者は「菅氏は首相の出方と党内情勢を見極め、二階派などと連携し効果的な時期に仕掛けるだろう」と指摘。女性初の首相としての上川陽子外相や、菅内閣の官房長官で派閥領袖(りょうしゅう)クラスから実務能力が評価されている加藤勝信元厚生労働相らを担ぎ、「脱派閥論者らしく、難局突破へ挙党態勢を演出していく」との見方を示した。
≪自民茂木幹事長「逆風強かった」≫自民党の茂木敏充幹事長は全敗の結果を受けて「大変厳しい選挙結果だったと受け止めている。非常に逆風が強かった」と党本部で記者団に述べた。早期解散には消極的な考えを示唆。「改革を進め、課題を解決することによって信頼回復に努め、党勢回復に全力で取り組みたい」と強調し、党の一致結束が重要とした。
≪著名人多数2位以下は混戦、東京15区≫東京15区の順位争いは混戦模様となった。無所属新人の須藤元気前参院議員(46)や、日本保守党の大学客員教授・飯山陽氏(48)が健闘した。日本保守党代表で作家の百田尚樹氏(68)は「敗軍の将は兵を語らず」としたが、事務総長の有本香氏(62)は「非常に手応えが大きかった」と選挙戦を振り返った。江東区選挙管理委員会によると、衆院東京15区補欠選挙の投票率は40.70%で、過去最低だった2017年の55.59%を更新した。
≪立民3区で全勝、泉代表「解散を」≫立民の泉健太代表は党本部で「裏金問題に対する自民党の真相究明は中途半端で、自民の政治改革案はむしろマイナスに働いた」と勝因を分析。「自民党が政治改革に本気で取り組まないのであれば、当然衆院解散すべきだ」と攻勢を強めた。全勝は泉氏にとって個人的にも胸を撫で下ろす結果だった。代表に就任した2021年11月以降、22年の参院選では議席を減らし、公認候補を立てた3つの国政補選で全敗。今回、結果が出せなければ“泉降ろし”につながるとも言われていた。
≪NHK速報で大河繰り下げ≫NHKは投票が締め切られた28日午後8時から開票速報の特番を放送した。同時間の大河ドラマ「光る君へ」の開始を10分間遅らせた。補選の速報をするために大河ドラマの開始時間をずらすのは異例。同局関係者は「政治不信と、物価高で生活が苦しくなる中で、政治への関心が高まっていると判断して決まった」と話している。昨年4月の衆院補選でも大河ドラマの開始を繰り下げたが、この時は統一地方選挙が同時に行われていた。