前頭葉を使って人生は前途洋々 50代で刺激して意欲あふれる60代に
2024年06月07日 05:30
社会
![前頭葉を使って人生は前途洋々 50代で刺激して意欲あふれる60代に](/society/news/2024/06/06/jpeg/20240606s00042000647000p_view.webp)
和田先生、それにしても刺激的なタイトルですね。
「人生は先送りするほど損をします。定年したらあれをやろう、これをやろうと思っていても、今あるその意欲が保たれている保証はありません」
確かにそうですね。前頭葉について教えていただけますか。
「前頭葉は脳の前方部分に位置し、思考する、創造性を発揮する、やる気を出す、行動や感情をコントロールする、変化に対応する、などの働きがあります。クリエーティブなことを担う部位です。前頭葉は40代から縮み始めると考えられており、“老化は前頭葉から”とも言われます。50代で前頭葉を使わない、すなわち、新しいことに挑戦しないような行動様式になると、いざ定年になっても何もできない。50代で前頭葉を使って、刺激することが大事です」
本に“前頭葉バカ”とありました。これまたちょっとキツイ表現ですが。
「意欲も、やる気も湧いてこない。前頭葉が使われないで、バカになった状態をそう名付けました。前頭葉が衰えてくると、人間は前頭葉を使わなくてもいいような行動を取るようになります。冒険をしなくなる。例えば、行きつけの店でしか食事をしない、同じ著者の本しか読まない、という具合です。試したり、疑問を持ったりする前から“そういうものだから”と受け入れてしまう。これでは前頭葉バカから抜け出せません」
前頭葉バカにはなりたくないです。どう対策すればいいんでしょうか。
「ズバリ、これまでに経験したことがない新しい体験をすることです。何よりも、変化を楽しむこと。行ったことのない店に足を運んでみる。自分と意見が違う人の本を読んでみる。自分が信じていることは本当なのか?と疑って、自己モニターをすることも大事です。例えば、血圧は下がれば下がるだけいいのか。脳卒中のリスクは低くなるかもしれないが、頭がボーッとすることにつながるわけです。あとは、アウトプットする習慣をつけてください。本を読んだら、それで終わりではなく、得た知識をアウトプットして、周囲からの反応を楽しむ。これも前頭葉の刺激になります」
本の「すべての悩みは対人関係の悩み」という一文も刺さりました。
「定年前に人間関係を整理することもお勧めします。50代になって役職定年になったら、もう上司の顔色をうかがう必要はないわけですから、一緒にいて心地いい人と付き合えばいいのです。言いたいことが言い合える仲間です。自慢話より失敗談を語ってください。失敗談は“次はこうしよう”という未来志向の話なので、前頭葉にいい影響があります。習い事とか、会社以外の場所、集まりに飛び込んでみるのもいいですね。定年後に役立ちます」
60歳まで待っていてはダメなんですね。
「60歳になって定年を迎えたからといって、意欲は出てきません。料理屋を始めよう、大学に入り直そう、と考えても困難になってきます。やりたいことがあったら、まだ失敗してもリカバリーができる50代の間に少しずつ準備を進めておくことです。50代まで勤め上げたんですから、もう十分。やるべき仕事はやって、会社からは定時で退社。有給休暇もしっかり取る。節約すべきは、お金ではなく時間です」
和田先生は「50代は人生の実験場」ともおっしゃってました。日本は今年、人口の半分以上が50歳以上になるそうです。あれをやっておけばよかった、これをやりたかったと後悔する人生にならないように、前頭葉を使って50代から冒険しましょう。
◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の73歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。健康に関する名物コーナーに登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。元為替ディーラーで経済評論家の岩本さゆみ氏との共著「日本経済 本当はどうなってる?」(青春出版社)が販売中。